【センバツ】京大工学部志望の彦根東・増居、9回までノーヒッターもサヨナラ負け「記録よりも勝ちたかった」

スポーツ報知
10回無死満塁、藤森にサヨナラとなる中犠飛を打たれて悔しがる増居

◆第90回センバツ高校野球大会第9日 ▽3回戦 花巻東1x─0彦根東=延長10回=(31日・甲子園)

 8強が出そろった。彦根東(滋賀)のエース左腕・増居翔太(3年)は9回まで無安打14奪三振の力投も、0―0で突入した10回に無死から初安打を許し、サヨナラ犠飛を浴びる悲運に泣いた。

 「記録よりも勝ちたかったです」。マウンド上と変わらない落ち着いた表情の中に悔しさがにじむ。勝利チームよりはるかに多い報道陣に囲まれてのインタビュー。彦根東・増居は「最後に踏ん張れなかったのは力不足です」と、報われなかった144球を振り返った。

 9回までスコアボードに「H」のランプをともすことなく、27個のアウトを積み重ねた。しかし、スコアは0―0。東北・ダルビッシュ有(現カブス)が2004年の1回戦(対熊本工)で記録して以来の無安打無得点は成立しないまま延長戦に。そして10回、先頭打者に初安打を許すと、最後は無死満塁から中犠飛を許し、快挙も白星も逃した。

 京大工学部志望の秀才左腕。初戦の慶応戦に続いてクレバーな投球が光った。打順が一巡したところで「真っすぐ狙いか変化球狙いか、だいたい分かった」と、打者ごとに勝負球を切り替えて手玉に取った。同じ直球にも微妙な緩急をつけるハイレベルなテクニック。2つの四球などで迎えた9回2死二、三塁も、この日最速の140キロで三振を奪い、切り抜けた。

 無安打なのはもちろん知っていた。同時に「いつか初安打を打たれる。大事なのは打たれた後」と“危機管理”の意識も完璧のはずだった。しかし、初安打の直後に四球。「逆に力んでしまった」と、失点につながった痛恨のミスを悔やんだ。

 野球は高校までのつもりだったが、「投球がうまい。制球がよく、三振が取れる」(巨人・渡辺スカウト)と、プロの評価は急上昇中。しかし、欅坂46の大ファンで「アイドルおたく」(捕手の高内希)の顔も持つサウスポーの視線は、大学受験やドラフトよりも最後の夏に向いている。「滋賀にはこの大会に出た近江や膳所もいる。足をすくわれないように、技術もメンタルも磨きたい」と、再挑戦を誓って聖地を去った。(星野 和明)

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