珍記録!1イニング5奪三振の東海大菅生・鈴木礼央、三振すべてカットボールで振り逃げに

スポーツ報知
春季東京都大会で1イニング5奪三振の珍記録を達成した東海大菅生・鈴木礼央

◆高校野球春季東京都大会 ▽2回戦 東海大菅生14xー2東海大高輪台=5回コールド=(4日・神宮第二)

 春季東京都大会で「1イニング5奪三振」の珍記録が生まれていた。昨夏甲子園4強の東海大菅生・鈴木礼央(れお)投手(3年)が、4日に行われた東海大高輪台との2回戦(神宮第二)の4回に、1イニング5奪三振をマーク。背番号11の奪三振ショーを、関係者の証言をもとに振り返った。(取材、構成・青柳 明)

 珍記録はひっそりと生まれていた。1イニング5K右腕となった鈴木は、苦笑いを見せて振り返った。

 鈴木「試合が終わってみて『あの回が5三振だった』って感じでした。追い込んでから打たれたら(監督に)怒られるので、低めに投げていたら、三振を取れていたって感じです」

 元中日の若林弘泰監督(52)も、試合中には気付いていなかったという。

 若林「試合が終わった後に(5三振と)言われて『あっ、そうだったんだ』と。イニングが終わった時は、キャッチャーを怒っただけです(笑い)。ボールはキレていましたね。ワンバウンドを振ってくれているんですから。だから、どんなことがあってもキャッチャーは止めないといけない。いつも言っているのは(捕手は)低めを要求するんだから、絶対に止めないといけない。止められないと、ボール(の高さ)が上がっていく、と」

 鈴木は6点リードの4回から2番手で登板。先頭の8番・久保航平左翼手(3年)、梅沢昂大投手(3年)を連続三振で2アウト。その後、1番・宮下歩二塁手(3年)、続く三浦諒大中堅手(2年)に連続振り逃げを許し、2死一、三塁のピンチを招いた。だが、この日2安打と当たっていた3番・佐藤豪紀遊撃手(3年)も三振に仕留めた。

 身長175センチと投手としては小柄で、直球の最速は140キロ台前半。5三振を生んだのは“新球”のカットボールだ。これまではカウント球として使っていたが、この冬にダルビッシュ(カブス)の動画を見て、ボールの握りを変えた。

 鈴木「三振は全部カットボールですね。ハマった感じです。あの試合は、ストレートとカットボールしか投げてないので。普段はカウント球でしか使わなかったけど、あの時は良くて、決め球でもカットボールを使うようにしました」

 この“魔球”に一番驚いたのは、受けていた伴野匠捕手(3年)だ。5三振の珍記録には、2暴投が絡んでいる。“演出”した捕手としては素直に喜べない。

 伴野「この日は、特にキレていて…。自分もちょっとビックリして。今までにはなかったですね。スピードとキレが増していて正直、戸惑いました…。監督からは『しっかりしろよ』と…」

 4強入りした昨夏の甲子園。ベンチを外れた鈴木は、全試合でボールボーイを任された。指揮官の期待を感じながら、ベンチから一番近いところで甲子園の空気、雰囲気を味わった。イニング間にロージンバッグを置きに行った時、さりげなくプレートに右足をかけて、スタンドを見渡した。

 鈴木「お客さんが満員で、雰囲気が違いましたね。(ロージンを)持って行っただけでも『すごいな』と。夏は先発して完封したいな、という思いもあるんですけど、まずは、どこで投げても0点に抑えること。今年は自分が投げて、甲子園で勝ちたいです」

 強気な投球が持ち味の1イニング5K右腕。100回の記念大会を迎える夏へ向けて、更なる成長を目指していく。

 ◆鈴木 礼央(すずき・れお)2000年4月14日、東京・江東区生まれ。18歳。東雲(しののめ)小3年から野球を始める。深川第五中では調布シニアに所属し、清宮(日本ハム)の1学年後輩。東海大菅生では2年秋からベンチ入り。175センチ、75キロ。右投右打。

 ◆若林監督夏に向け複数投手継投策

 チームは国士舘との準々決勝(21日、神宮第二)で敗戦。鈴木は1点を追う8回から3番手で登板したが、3四死球を与えるなど1回を2安打2失点だった。若林監督は「何も得るものがなかった」とバッサリ。100回を迎える夏の記念大会へ向けて、指揮官は複数投手での継投を視野に入れている。現在はリリーフを務めている鈴木の起用法も、今後のチーム状況によって変わりそうだ。

 ◆プロ野球記録は4

 1イニング奪三振のプロ野球記録(1軍公式戦)は「4」で、これまで20人(セ12人、パ8人)が記録している。最近では、16年7月29日に阪神・藤浪が中日戦(甲子園)の7回に。同日にDeNA・石田が広島戦(マツダ)の7回にマークし、同日に2人が達成したのは初めて。同年5月24日にはヤクルト・八木が阪神戦(神宮)の1回に4三振を記録しており、シーズンに3人が記録したのも初めてだった。

 プロ野球の2軍では1イニング5奪三振がある。10年5月8日のイースタン・日本ハム戦(利府)で楽天の木谷寿巳が同点の7回から登板し、対戦した打者5人全員から奪三振を記録した。先頭の佐藤を三振、岩舘は振り逃げ、市川を三振で2死。杉谷にも振り逃げを許したが、最後は中島を空振り三振。右腕は「調子は良くて、三振を取りたい場面では思い切り腕を振りました。(振り逃げは)フォークがワンバウンドして、イレギュラーした。たまたまです」とコメントしている。

野球

×