100回目の夏の甲子園、沸かせる関東の“スーパー1年生”候補はこの3人

スポーツ報知
ルーキー・井上は昨夏甲子園V校・花咲徳栄でライトのレギュラーをつかんだ

 千葉で行われていた春季高校野球関東大会は、高崎健康福祉大高崎(群馬)の6年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた。今夏の甲子園は、記念すべき第100回大会。その地方大会で優勝候補に名を連ねるであろう出場校で、早くも出場機会を得ている1年生が何人もいた。今夏を沸かせる“スーパー1年生”予備軍として、花咲徳栄(埼玉)・井上朋也右翼手、山梨学院・栗田勇雅捕手、東海大相模(神奈川)・加藤響遊撃手の3人をピックアップする。

 ◆憧れ先輩に対抗心、強心臓の花咲徳栄・井上

 180センチ、80キロの肉体からは、早くも自信と風格が漂っている。昨夏の甲子園を制した花咲徳栄で、井上は堂々とレギュラーを張る。入学早々に「7番・右翼」の定位置を確保し、春の県大会では2本塁打。19日の1回戦(対専大松戸)でも、逆方向の右翼席に高校通算5号を放り込んだ。長所を聞くと、「しっかりと自分のスイングができ、チャンスに少し強いです」と控えめな答えが返ってきた。

 奈良・生駒ボーイズに所属していた昨夏、ボーイズ日本代表の一員として世界大会(米カリフォルニア州アラメダ)で優勝。智弁学園、天理といった関西圏の強豪10校以上から声がかかったというが、「岩井先生がわざわざ大阪まで足を運んでくれて、何回も自分のことを見てくれたので」。花咲徳栄・岩井隆監督(48)の熱意に心を打たれ、埼玉行きを決意した。

 チームには絶好のお手本がいる。今秋のドラフト上位候補に挙がるスラッガー・野村佑希内野手(3年)だ。「野村さんのように、ホームランも打てて、率も高いバッターになりたいです」と、1回戦で高校通算52号を放った先輩に心酔している。

 だが、高校通算ホームランの目標を聞くと、「まずは野村さんを抜いて、そこからどんどん打って80本くらいを目指したいです」と即答。憧れの先輩すらも、強心臓の1年生スラッガーにとっては通過点に過ぎない。

 上位を打つ力もありそうだが、「本人が楽なところで打たせてあげます」と岩井監督。底知れぬパワーを持つ井上が7番に座る徳栄打線は、今年も猛威を振るいそうだ。(片岡 泰彦)

 ◆井上 朋也(いのうえ・ともや)2003年1月28日、大阪・四条畷市生まれ。15歳。四条畷中では「生駒ボーイズ」に所属し、「4番・中堅」で3年夏にジャイアンツカップ16強入り。中学通算24本塁打。好きな打者はソフトバンク・柳田とオリックス・吉田正。180センチ、80キロ。右投右打。

 ◆リードの課題反省、貪欲さが売りの山梨学院・栗田

 福島からやってきたルーキーが、初戦敗退に終わった関東大会で確かな爪痕を残した。20日の日大三戦。栗田は2回2死三塁の第1打席で「しっかり振れた」と左翼席へいきなりの先制2ラン。5―8で逆転負けを喫したが、既にチームに欠かせない存在であることを自ら証明した。

 優勝した県大会でも、1年生とは思えない堂々としたプレーを見せた。初戦(2回戦)の山梨戦で途中出場すると、3回戦以降は決勝の東海大甲府戦まで4戦連続スタメンと定位置をつかんだ。打撃でも2本塁打。8番打者ながら強烈な印象を与えた15歳は、「中学とは投手の(球の)キレや打球の強さ、走者の速さも違う。経験になった」と充実感を口にしている。

 背番号も、関東大会では県大会の「12」から「2」に昇格。昨秋の新チーム結成以降、本職ではなかった選手が正捕手を務めていただけに、小4から捕手を務める栗田の加入は大きい。「(日大三に)8点も取られたので悔いが残る」とリード面などで課題はあるものの、「ミスを減らしていきたい」。貪欲な姿勢で、さらに成長していく。(古川 浩司)

 ◆栗田 勇雅(くりた・ゆうが)2002年11月3日、福島・いわき市生まれ。15歳。小3から野球を始め、小4から捕手。中学では「いわきボーイズ」でプレー。バッテリーを組んでいた小吹悠人とともに山梨学院に進学した。172センチ、78キロ。右投右打。

 ◆走攻守でソツなし、3拍子そろった東海大相模・加藤

 自分のプレースタイルを思う存分、発揮した。加藤は20日の2回戦(対花咲徳栄)で「7番・遊撃」で公式戦デビュー。「初球からフルスイングしていくところが一番見てほしいところです」と胸を張る通り、いずれも初球打ちで2安打1打点をマーク。守備でも内野の要を無難にこなした。

 「1番・遊撃」を務める小松勇輝主将(3年)の負傷欠場で巡ってきたチャンスだったが、「小松さんの代わりではなく、自分がショートをやるんだという意識で常に練習から取り組んでました」と言い切る。翌21日の準々決勝(対常総学院)でも2安打。今春のセンバツで4強入りしたチームの中でも、臆することなくプレーしきった。

 海老名シニアでは「4番・遊撃」で活躍。「東海大相模は、うまさというより強さの部分をすごく重視している。自分の強さをもっと出していけたら、高校野球に限らずその先の自分の野球人生にもつながっていくと思った」。多くの強豪校の中から「アグレッシブ・ベースボール」を標榜(ひょうぼう)する同校を選んだ。

 甲子園通算3度優勝の名将・門馬敬治監督(48)が「走攻守にソツなく野球ができ、これからもっとスケールの大きな選手になっていくであろうというのが、彼の一番の魅力」と評する逸材が、上々のスタートを切った。

 ◆加藤 響(かとう・ひびき)2002年6月15日、神奈川・厚木市生まれ。15歳。厚木中では「海老名シニア」に所属し、2年時に「5番・三塁」で全国大会3位。目標とする選手はヤクルト・山田哲。「走攻守3拍子そろって、逆方向にも強い打球が打てる。自分もそういうところを磨いていきたい」。50メートル走6秒2。178センチ、70キロ。右投右打。

 ◆「打高投低」だった春季関東大会、健大高崎が6年ぶりV

 18試合で37本ものアーチが飛び交う打高投低の大会となった。優勝した健大高崎も計4戦で7本塁打を含む51安打39得点。決勝で高校通算71号を放ったドラフト候補の山下航汰外野手(3年)が1番を打つ打線の破壊力は際立っていた。

 だが、喜んでばかりもいられない。最近10年で春の関東大会を制し、夏の甲子園にも出場したケースは4度だけ。この時期まで公式戦で真剣勝負を繰り広げた疲労も懸念される。健大高崎も6年前の優勝時は、エースが肩を故障したこともあり、夏の群馬大会4回戦で伊勢崎清明にまさかのコールド負けを喫している。

 「6年前の反省を生かしたい」と青柳博文監督(45)。複数投手を擁している今年は、夏を勝ち抜くことができるか。関東王者の戦いぶりに注目していきたい。(アマ野球担当キャップ・片岡 泰彦)

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