【沖縄】未来沖縄「ゆる~く」好発進

スポーツ報知
日米8球団のスカウトが視察する中、5回3安打無失点と好投した未来沖縄・宜保

◆全国高校野球選手権 沖縄大会 ▽2回戦 未来沖縄7―0沖縄工=7回コールド=(アトムホームスタジアム宜野湾)

 沖縄では、創部4年目で今春の県大会を制した通信制の未来沖縄が、沖縄工を7回コールドで下して初戦を突破。沖縄水産、那覇商を計3度の甲子園出場に導いた神山昂監督(66)が初代監督を務め、今秋ドラフト候補の宜保翔(ぎぼ・しょう)遊撃手兼投手(3年)が4番を打つ新鋭は、通信制ならではの独自カリキュラムを生かして急成長。ともに全国制覇の経験を持つ興南、沖縄尚学に続く県内第3の勢力に名乗りを上げた。

 あのPL学園に似たユニホームを身にまとった未来沖縄ナインが、気持ちよさそうにダイヤモンドを駆けめぐった。沖縄工が繰り出した5投手に計11安打を浴びせて7得点。昨秋、今春と県ベスト8入りした難敵を7回コールドで退けた。神山監督は「もうちょっと硬くなるかなと思ったら、ゆる~くやってくれた」と目を細めた。

 沖縄に現れた新星だ。通信制の同校に15年4月から野球部が創設されることになり、神山監督が初代監督に就任。実績もグラウンドもないところからのスタートだったが、沖縄の高校野球を全国トップレベルに引き上げた故・栽弘義監督が豊見城、沖縄水産を率いた際にコーチとして仕えた県屈指の名将を慕って、県内の有力選手が集った。

 計35人の部員は、総合学科スポーツコース野球専攻で学ぶ。平日は那覇市内の校舎に登校し、昼で授業を終えると16年9月から使用する糸満市内のグラウンドにバスで移動。夕方まで練習に励む。また、脳トレやメンタルトレーニングの授業もあり、スポーツ心理学の権威である東海大・高妻容一教授の指導も受ける。宜保は「自分は絶対に打てると言い聞かせて打席に入ったり、春の大会では指導が生きました」と明かす。

 沖縄らしい「なんくるないさー」(何とかなるさ)の気質を排除することで県トップの強豪に君臨する興南、沖縄尚学とは一線を画し、個性を尊重するチーム方針を掲げる。宜保も「自分は、型にはまらないプレーが好きなので、個性を生かせると思った」と同校への進学を決意した。

 この日は、日米8球団のスカウトが視察する中、最速144キロを計測するなど5回3安打無失点、打っても2安打。「投げるのも打つのも好き。野球が好き」という宜保を中心にした未来沖縄ナインが、沖縄の高校野球の勢力図を一気に書き換える。(片岡 泰彦)

 ◆沖縄の高校野球勢力 甲子園通算勝利数は23勝の興南がトップで、沖縄尚学と沖縄水産が21勝で2位タイ。近年では、沖縄尚学が99年春に県勢初V、08年春に2度目のV。興南も我喜屋監督が就任した07年以降、10年の春夏連覇など計14勝。この2校が2強を形成している。

 ◆未来沖縄 正式名称は学校法人KBC学園未来高校沖縄学習センター。通称は「KBC」。県内で多くの専門学校を運営するKBC学園傘下の専修学校「インターナショナルデザインアカデミー」が広域通信制の「未来高校」(本部は愛媛)と提携し、08年に那覇市内に開校。3年間で両校の卒業資格を取得できる。

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