NPBで来季から投げずに敬遠の「申告敬遠」導入 メジャーから1年遅れで

スポーツ報知
90年6月2日の広島戦で、敬遠のボールを打ち、サヨナラ二塁打を放ったクロマティ(捕手・植田)

 プロ野球で来季から、守備側の監督が敬遠する意思を球審に伝えれば投球せずに四球となる「申告敬遠」ルールが導入される見通しであることが19日、分かった。来年1月のプロ、アマ合同の規則委員会で正式に決まる。米大リーグでの実施から1年遅れでの導入となる。

 米大リーグでは試合時間短縮を目的に今季から実施された申告制の敬遠。2015年に導入された本塁での衝突防止(コリジョンルール)、16年の併殺阻止のスライディング禁止もそれぞれ翌年に日本で実施されており、今回も同じように1年遅れでの導入となる。関係者によると日本プロ野球選手会からも特に導入への反対意見は出ておらず、来年1月の規則委員会での承認を経て、来季から捕手を立たせての敬遠四球は姿を消すことになる。

 かつて巨人・クロマティや阪神・新庄が敬遠球をサヨナラ安打にしたり、今季もヤクルト・ルーキが敬遠球を暴投して決勝点を献上するなど、ドラマを生んできた敬遠。導入1年目の大リーグでは、試合で実際に敬遠されたマーリンズのイチローが「4球の間の空気感がある。面白くない」と反対の声をあげるなど、新ルールには賛否両論がある。日本のプロ野球で、今季の敬遠四球(途中で捕手が立ったものも含む)はセ・パ合わせて90個。平均すると10試合に1回程度だけに、時間短縮効果も微妙だ。

 プロ野球では来季から、これまで本塁上のプレーやフェンス際の打球などに限定していたリプレー検証を、大リーグに合わせて大幅に拡大する「リクエスト制度」も導入する。申告敬遠と合わせ、さまざまな議論を呼ぶことになりそうだ。

 ★申告敬遠Q&A

 Q・守備側が敬遠を決めたら、どういう流れで打者は一塁に行くの?

 A・ベンチから監督が球審に指示。それを打者に伝えます。

 Q・MLBでは今季から導入されたけど、実際、敬遠はいくつあったの? そして、時間短縮には貢献しているの?

 A・敬遠は970。1試合平均両軍で0・4個(日本では0・1個)。1試合平均時間(9イニング)は3時間5分で昨年の3時間1分より4分伸びています。本塁打が多く打撃戦が多くなったこともあり、まったく効果はありませんでした。

 Q・今までは敬遠で投げた分も投手の球数にカウントされたけど、どうなる?

 A・カウントされません。ただし、走者が一塁で暴投や捕逸などで進塁した後に敬遠が指示された場合は、そこまでの投球数はカウントされます。

 Q・MLBでは今季から導入されたけど、日本でも同じルールになるの?

 A・これまでのコリジョンルールなどMLBが導入したルールは基本的に1年後に日本も導入してきた。今回も同じ形だろうが、ルールなど詳細は今後詰めることになるでしょう。

 ◆敬遠を巡る主なドラマ

 ▼1968年5月11日・中日―巨人戦(中日) 巨人・長嶋が9回2死二塁での敬遠に、抗議の意思を示すためカウント2ボールからバットを持たずに構えた。中日バッテリーはそのまま敬遠。

 ▼81年7月19日・日本ハム―西武戦(平和台) 日本ハム・柏原が6回2死三塁で西武・永射の敬遠球を本塁打。

 ▼82年4月3日・大洋―阪神戦(横浜) 阪神・小林が同点の9回2死一、三塁で敬遠球を暴投してサヨナラ負け。

 ▼90年6月2日・巨人―広島戦(東京D) 巨人・クロマティが同点の9回2死二塁で広島・金石の敬遠球を右中間へサヨナラ二塁打。

 ▼99年6月12日・阪神―巨人戦(甲子園) 阪神・新庄が同点の12回1死二、三塁で巨人・槙原の敬遠球を左前にサヨナラ打。

 ▼2017年5月21日・ヤクルト・阪神戦(神宮) ヤクルト・ルーキが同点の7回2死二、三塁で敬遠球を暴投し、決勝点を献上。

 ◆0球敗戦投手になる可能性 Aチームが1点リードで迎えた無死一塁で、投手交代。マウンドに上がった右投手が一塁にけん制悪送球で無死二塁に。ここで申告敬遠を選択し、一、二塁になった。相手Bチームが右打者から左打者を代打で送ってきたため、Aチームベンチはここで右から左投手にスイッチ。しかし、左投手がこの左打者にサヨナラ3ランを浴びた。このとき、勝ち越しの走者を出塁させた右投手が0球で敗戦投手になる。なお、MLBではまだ、このケースはない。

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