ペナントを左右する“トラックマン革命”…プロ野球界に押し寄せる超ハイテクの波

スポーツ報知
昨年のオールスター第1戦でナゴヤドームのバックネット裏上部に設置された弾道測定器

 超ハイテクの波が日本プロ野球界に押し寄せている。今季までに広島を除く11球団がトラックマン(高性能弾道測定器)の導入を決め、情報戦が新たな局面に突入した。球界に革命を起こしている最新技術の裏側に迫り、日本プロ野球(NPB)でいち早くトラックマンを導入した楽天のチーム戦略室・村田慎吾室長が、効果と課題を語った。

 トラックマンをNPBで最初に導入したのは楽天だ。メジャーで使われていることを知った三木谷オーナーらフロントからの発案があって、15年に本拠地に設置した。

 ファンにもなじみのある「打率」「本塁打数」「防御率」「球速」などは、いわば結果を示す数字だ。ただ、それらは年間を通したチーム編成や対戦相手の傾向分析には役立つが、選手自身の状態確認や成長を促すものではなかった。選手の能力向上に役立つ―。それがトラックマンの特性といえる。村田室長は証言する。

 「トラックマンは、今までのデータの中で初めて選手が自分で活用できるデータなんです。今までのデータには自分を助けるデータはありませんでした。選手が何かを変えようと思ったり、変化を感じた時には適していなかったんです」

 本塁打を放った際の飛距離、打球角度、投手が投げたボールの回転数やスピードなど、一部はテレビ放送でも公表されることも増えた。だが、収集できるデータはそれだけではない。

 「計測されるのは40データくらいあります。今、楽天で選手にフィードバックするのは10~15(項目)くらい。今、試行錯誤していて運用していない秘密のデータもいくつかあるんです」

 より利益を得ているのは打者よりも投手だともいう。

 「投手は自分でコントロールできることが数字に出るから、調整しやすい。打者は打球速度が出なかったとしても相手の投手による部分も大きいです。今のところは投手の反応の方がいい」

 特に投手が関心を示すのがリリースポイントに関するデータ。地上から何センチ、本塁から何メートルのところでリリースしているか。変化球と直球で、その位置に違いはあるのか。こういった詳細な情報が入手できるため、球種によるフォームのクセの解消などにもつながるというわけだ。

 「(リリース位置は)回転数とかよりも気になっていると思います。自分でコントロールしやすい部分でもあるし、比較的使いやすい指標。自分の感覚の確認も試合後にできる」

 ただ、どんなデータでも選手に伝えればいいものではない。課題もある。

 「もっとデータを分析していかないといけない。見つけていないデータもあるはずです。伝えるもの、伝えないもの(の振り分け)にも気をつけないと。『いいスピード出る』と安直に伝えて、けがをしてしまっては元も子もないので、気をつけています」(取材・構成=安藤 宏太)

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