【ロッテ】大隣、戦力外の古巣を3回0封

スポーツ報知
5回を3者凡退に抑えて細谷(右)とハイタッチする大隣(カメラ・岩下 翔太)

◆オープン戦 ソフトバンク3―3ロッテ(10日・タマスタ筑後)

 昨季限りでソフトバンクを戦力外となり、入団テストを経てロッテ入りした大隣が古巣とのオープン戦(タマスタ筑後)の4回から2番手登板。3イニングを2安打無失点の好投で“凱旋登板”を飾った。一時は地獄を見た33歳左腕が、開幕ローテのダークホースに急浮上した。

 悔しい思い出が詰まったマウンド。快投を演じた大隣はタカ党の温かい拍手に包まれ、笑顔でベンチへと下がった。3―1の6回2死一塁。中村を外角へのスライダーで二ゴロに仕留め、女房役の田村とグータッチを交わした。「収穫のある投球だった。しっかりと投げ切ることができた」と充実の表情で汗を拭った。

 ホークス時代の16、17年はシーズンの大半を2、3軍の本拠地・タマスタ筑後で過ごした。状態が良くても、ホークス1軍の厚い選手層の前に先発機会がなく、ファームの試合で悶々(もんもん)とマウンドに上がる日々が続いた。時には有望な若手が先発した後を受け、2番手で登板したことも。実力の世界ではあるが、先発にこだわってきた男にとっては屈辱。「心が折れそうになった」ことも一度や二度ではなかった。

 結局この2年間で1勝に終わり、オフには戦力外通告。昨年11月の12球団合同トライアウトも受験したが、どこからもオファーはなかった。「本当に野球ができなくなってしまうのかと、不安だった。あの時はまた野球ができるとは1ミリも想像できなかった」。ロッテからテストの話が舞い込み、チャンスをものにした。

 無職になった日から5か月。かつて苦汁をなめ続けた地で3回2安打無失点の好投。満員となった3113人のファンと優子夫人、1歳7か月の長男の前で「これまでと違う自分が見せられた」と胸を張った。

 13年には国指定の難病「黄色靱帯(じんたい)骨化症」を発症。今も左足にはマヒが残り、長距離走ができないが、短距離走の本数を増やすなど知恵と努力でカバーしてきた。2月27日の練習試合(アイビー)でも古巣相手に2回無失点と、計5イニング連続無失点の“鷹キラー”に井口監督は「彼は打たれたくないという気持ちが強いでしょうから、あえて当てた」とニヤリ。左腕不足の台所事情もあり、指揮官は「状態を上げてくれば、ローテーションで回れる」と“大穴”の今後に期待した。狙うはテスト入団から、一気に開幕ローテ入りの大逆転劇。大隣も「結果を出し続けていく」と高らかに宣言した。(長井 毅)

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