【ソフトバンク】内川、WBC走塁ミスに悩み苦しみ「これからも背負って生きていく」…元担当記者が振り返る

スポーツ報知
8回1死一塁、内川が中前安打を放ち、通算2000安打を達成

◆西武0―3ソフトバンク(9日・メットライフドーム)

  ソフトバンク・内川聖一内野手(35)が9日、プロ野球51人目の通算2000安打を達成した。元担当記者が苦難の道のりを振り返った。

 どん底を知った男の本音に触れ、思わず言葉を失った。「僕の責任だから。これからも背負って生きていくしかない」。昨年1月の自主トレ中、第4回のWBCを控えた内川が真っすぐに前を見て言った。「自分の責任」と断じたのは13年の第3回大会。準決勝での走塁ミスだった。

 「あの時の記憶はほとんどないんです…」。3連覇の可能性を閉ざし、試合後は人目もはばからず号泣。唯一思い出すことができるのが、帰国時の衝撃的な心境だった。「あくまで僕に関してだけですけど、誰しもが納得する理由でこの飛行機が…、と。そうすれば、日本に戻らなくて済むのに…と思いました」。機内では自分を責め、悩み苦しんだ。サッカーW杯でも日本代表選手が空港で水をかけられる事件があったことを知っている。「自分がやったことなので、何をされても仕方ないと思っていました」。日の丸を背負ってきた責任や覚悟。まさに「命がけ」で戦っていた。

 09年の第2回大会で初めて国際大会を経験した。前年のシーズンに打率3割7分8厘で首位打者に輝き、尊敬するイチローから「ハイ、ウッチー! すごかったらしいじゃん」と声をかけられた。野球少年のように喜び、同時に打者として磨きをかけた大舞台。「内川という人間が成り立っていくんだ」と実感もした。

 「僕は強い人間じゃない。今でも逃げ出したくなる。でも、逃げるところはないですから」。名球会入りの勲章を手にする過程で、相当に心身をすり減らしていただろう。だからこそ、この日だけは心の底から笑ってもらいたい。(長田 亨)

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