【ブルーリボン賞】作品賞の岸監督「こだわった分、共感してもらえた」

スポーツ報知
「あゝ、荒野」で作品賞を受賞した岸善幸監督(

 東京映画記者会(報知新聞社など在京7紙)が主催する「第60回(2017年度)ブルーリボン賞」が23日、決まった。作品賞は報知映画賞と同じく「あゝ、荒野」(岸善幸監督)で、ユースケ・サンタマリア(46)が助演男優賞に輝き2冠。授賞式は2月8日、東京・内幸町のイイノホールで行われる。

 報知映画賞、日刊スポーツ映画大賞に続く作品賞受賞。「あゝ、荒野」の岸善幸監督(53)は「プロデューサーと一緒に、『やったー! 3つ目』と。賞を3ついただけたら、その年を代表する映画と言えるかな、と思っていたので、本当にうれしいです」と喜びを爆発させた。

 寺山修司の同名小説が原作。喪失感を抱く2人のボクサーを中心に、周囲の人間の葛藤や生き様を前後編、約5時間に渡って描いた群像劇。「原作の味わいは群像劇であること。そのためには登場人物それぞれの輪郭をはっきりと描きたくて(5時間は)欲しかった。批判はありますけど、この時間は必要でした」と胸を張った。

 中でもこだわったのは、合計1時間におよぶボクシングの試合のシーン。「脚本が完成する前から、ボクシングをどれだけリアルに描くかを念頭に置いていました。実は実際に殴っちゃってるシーンもあるんです。菅田将暉くんのフックが、山田裕貴くんに間違えてモロに入っちゃって、山田君の意識が飛んだり。“ミス”でパンチが当たっちゃってるところもかなり使ってます」と明かし「こだわった分、共感してもらえたのかな」と振り返った。

 テレビのドキュメンタリーやドラマの世界で長く活躍し、長編映画は2作目。賞レースを席巻しても自然体を意識しようと心がけている。「報知映画賞を受賞した時に心の師匠と慕っている(映画プロデューサーで美術監督の)磯見俊裕さんに『取りました』と送ったら『人が変わらんように』と返事が来て。あまり調子こいちゃいけないなと。今回の受賞で『映画監督』という肩書がつきましたけど、そこが変わったぐらいですかね」。

 迫力あるボクシングシーンだけでなく、今作では登場人物の性格を象徴するような性描写も臆せずに描いた。「ウェブのインタビューで『ぬれ場は緊張する』っていう記事が出たことがあったんですけど、ぬれ場で緊張しない人はいないと思うんです。異空間ですよ。ぬれ場をやった時、映画監督としてちゃんとやっていけると思いました」。監督2作目とはいえ、冗談交じりに笑わせる貫禄をのぞかせていた。

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