天海祐希は“全身女優” 「仕事=演技」インタビューやバラエティーで気分転換

スポーツ報知
「出させていただいた作品が私の宝物」と笑顔で語った天海祐希

 女優・天海祐希(50)が、23日放送の読売テレビ開局60年スペシャルドラマ「天才を育てた女房~世界が認めた数学者と妻の愛~」(日本テレビ系、後9時)に主演する。晩年に世界に認められ、文化勲章を受章した天才数学者・岡潔さんの奇想天外な人生を支えた妻・みちさんを演じた。昨春、芸能生活30周年を迎えた“全身女優”は「できれば私は『私自身』を生きる天才になりたい」と言葉に力を込める。

 地味にも映る控えめな色合いの着物でも、撮影スタジオの中がパッと明るく華やぐ。171センチの長身から放たれる、りんとしたオーラ。天賦のスター性の持ち主が、名もなき天才を支え抜いた“糟糠(そうこう)の妻”を、全身全霊をかけて演じた。

 数学の未解決問題「ハルトークスの逆問題」を約15年かけて解決し、世界の学界を驚かせ、晩年になって国内でも認められた文化勲章受章者・岡潔さん(1901―78年)の妻・みちさん役。奇妙キテレツな潔さんに翻弄されながらも、夫のひたむきさに打たれ、生活苦を乗り越えていく。

 「共感? まず、結婚してないですから」と笑いながら、潔さんの存在は以前から少し知っていたといい「出演の話をいただき、何かの縁だなと。潔さんの頭の中は私みたいな凡人には想像もつかないですが、才能を開花させる“栄養”になる方と、ちゃんと巡り合うようになっているんだなあ」と、“出会いの妙”をしみじみと語る。

 潔さん役は、同学年の佐々木蔵之介(50)。「一人の人間を信じていくということは、共演者への信頼感と似ているんじゃないかな」と、佐々木との二人三脚の芝居と重ね合わせる。互いに「蔵ちゃん」「あまみん」とフランクに呼び合う2人は06年の単発ドラマ「キッチン・ウォーズ」以来12年ぶりの夫婦役となった。

 撮影では、数学に没頭して机に伏すことも多かった佐々木に対し、天海は生活のために農業に精を出すなどきついシーンが続々…。佐々木は「毎日、朝が早いのに、現場に張りがあった。あまみんの士気のおかげ。ドラマをしっかり背負っているし、みんながついていく。頼りがいのある背中です」と称賛。これには「“恐怖”で抑え込んでいるだけ」「また『頼られキャラ』になっちゃう!」と困った表情を見せたが、そこは「理想の上司像」のトップ常連。番組の“座長”として、最大限の褒め言葉だ。

 本作で意識したのは、時代の伝道師的な役割だ。「名もない方たちでも、つらい思いをしながら、大変な時代を乗り越えてきた先人がたくさんいる。それを忘れないでほしいという思い。私の世代が明治・大正時代を見たり聞いたりするのと一緒で、今の若い世代に見てもらえるのは大事」と言葉をかみしめる。

 潔さんにとっての数学のように、没頭できる対象は「お仕事=演技」だという。「趣味もないんです。気分転換もお仕事の中でできますよ! こうしてインタビューでお話ししたり、宣伝でバラエティーに出させていただいたり。でも、撮影はただただ過酷。そこまでは若くない」(笑い)。

 やりがいのある仕事の連続で、前進を実感する。「目の前に、毎日、やるべきことがあるのは、幸せですよね~。それをクリアしていって、どれだけ自分の身になるかは分からないけど『対自分』として、いい結果をもたらしてくれる。宝物になっているのかも」。潔さんのような才能を尋ねると「私自身を生きる天才になりたいです。自分を曲げないことが正しいとは思いません。この世に生まれたことは、試練かもしれないけど、最終的に“自分”になれればいいかな」。哲学っぽい問答のようでも、真意はシンプル。素直に生きる、ということだ。

 ドラマの冒頭。普通なら天から地へと落ちる雷が、地から天に向かい、潔さんが「あり得へん」と語り、みちさんが「『ないもん』でも『ある』って考えるのが大事や!」と諭し、天才の思考に刺激を与える。ないものでも、あると思う。エンターテインメントの世界で生きる人たちが推進力にする“根拠のない自信”とも通じる。

 「それは、ありますね。獅子座か、O型か(ともに天海)の性格みたいです(苦笑)。でも、根拠がないだけで、何もせず自信を得ているわけじゃない。どれだけ台本を読んだか、セリフを練習したか。それで得た自信を持ってないと、お客さまの、カメラの前には立てません。『これぐらいでいいか』では、その程度の自信にしかならない。『これだけやったんだから』を頼りにするしかないんですよね。正解のないお仕事だから、余計に」。美しき求道者は、自分に向けて改めて言い聞かせた。

 1987年、「宝塚をどり讃歌」で宝塚歌劇団の初舞台を踏んで、昨春、芸歴丸30年を迎えた。「すごいね~(ため息)。50年ぐらいの時には多分、生きてないでしょうけど」とジョークを飛ばしつつ「長かったような、短かったような。でも、こんなに幸せな毎日を送れていいのかな?と思います」と、充実の笑顔を見せる。次なる10年史がスタートしたばかりだが、「感謝の気持ちはお仕事で返すしかない。誠意をもって、真っ正面から努力して。次の10年を見据えて…というより、今日をきちんと生きる。その積み重ねかな」。歩幅の大きさよりも、一歩を踏む気持ちを大切に―。(ペン・筒井 政也)

 ◆天海 祐希(あまみ・ゆうき)1967年8月8日生まれ。50歳。東京都出身。85年に宝塚音楽学校に首席入学し、87年に宝塚歌劇団に入団。1年目で「ME AND MY GIRL」の新人公演で初主演する。93年に、近年では最も早い7年目で月組トップスターに就任。95年退団。ドラマ「離婚弁護士」(04年)、「女王の教室」(05年)の大ヒットで一躍、テレビ界でも注目を集めた。3月17日~5月31日、劇団☆新感線公演「修羅天魔~髑髏城の七人 Season 極」(豊洲・IHIステージアラウンド東京)に主演する。身長171センチ。

 ◆「天才を育てた女房」 1924年夏の大阪・日本橋。小山みち(天海)は岡潔(佐々木)という変な京大生と出会う。隠されたお宝の場所を数学で解明し、人助けした潔に「意外とすごいんやな」と引き込まれ、後に結婚。やがて子供も授かるが、潔は数学にしか興味がなく、生活は限界寸前。それでも、数学に打ち込む純粋さを理解し、数々の苦難を乗り越えていく。脚本は「ドクターX」「相棒」などの林誠人氏、監督は「世にも奇妙な物語」などの落合正幸氏。共演はほかに生瀬勝久、立川談春、笹野高史、内場勝則、萬田久子、泉ピン子ら。

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