たけし、大杉さんは「本当の役者」 涙を封印し受賞たたえる

スポーツ報知
大杉漣さんを悼んだビートたけし(左から3人目)と「アウトレイジ 最終章」に出演した(左から)大森南朋、ピエール瀧(1人おいて)松重豊

 タレントのビートたけし(71)が審査委員長を務める第27回東京スポーツ映画大賞の授賞式が25日、都内で行われた。21日に急性心不全のため急逝した俳優の大杉漣さん(享年66)が昨年9月公開の北野武監督最新作「アウトレイジ 最終章」での演技で助演男優賞を受賞。共演した他の受賞者たちがそれぞれに別れを告げた。

 まるで映画の続編が始まったような光景だった。「アウトレイジ 最終章」での大杉さんは、組織の長に就いていながら頼りがいのない暴力団の会長という難役を務めた。求心力がなくとも虚勢を張り、最後は殺される男の悲哀を熟練の演技力で見事に演じ切った。

 壇上では、助演男優賞を同時受賞した大森南朋(46)、ピエール瀧(50)、松重豊(55)、金田時男(80)、さらに主演男優賞の西田敏行(70)、塩見三省(70)、そして共演者であり監督のたけしが偉大なバイプレイヤーを悼んだ。

 「ソナチネ」「HANA―BI」など過去10作品で起用し、自作に欠かせない存在として大杉さんを撮ってきたたけしは「大杉漣さんは残念ながらいらっしゃらないけど、(日本)映画を支えていて、どんな役もこなし、画面に(存在を)印象付ける本当の役者さんたち」と受賞者たちを称えた。前夜、TBS系の情報番組「新・情報7daysニュースキャスター」では「同じような(状況の)人は世界中にたくさんいるんだけど、やっぱり近い人の死って、こたえるね…」と目尻を拭ったが、祝福の席では涙を封印した。

 テレビ東京系ドラマ「バイプレイヤーズ」で共演し、20日夜に同作のロケ先で体調不良を訴えた大杉さんと病院に同行し、翌日未明に最期をみとった松重は「デビューした時、大杉漣さんに映画の楽しさを手取り足取り教えていただいた」と感謝。1992年の映画デビュー作「地獄の警備員」での共演を振り返った。

 さらに「こんな晴れやかな場所に一緒に立てるんですね、という喜びを4日ほど前に千葉の海(ロケ先)で言ったばかりなので、残念ですけど、湿っぽいことが嫌いな漣さんなので前を向いてみんなで頑張っていきたいです。漣さん、これからも日本の映画を、僕たちを見守っていて下さい」と天国へと語り掛けた。

 大森は「大杉漣さんと一緒に(賞を)取れたことを誇りに生きていこうと思います」、ピエールは、視線を天国に向けて「組長(大杉さんの役柄)、いただきました!」と、あえて笑顔を見せた。

 西田は「大杉漣という戦友を失いました。『釣りバカ』(2001年の『釣りバカ日誌12 史上最大の有給休暇』)でも楽しげに演じてくれた。とってもつらいです。でも、突然逝ってしまう、ということは大杉漣らしいと思う。人間が死ぬ時は全て寿命だと思わないと納得出来ません」と語り「漣ちゃん、あなたが演じた北野組の役は私にスライドすることになりました。ありがとう」とジョークも交じえて偲んだ。

 一時は療養生活を送るなど体調を崩し、つえを片手にマイクに向かった塩見は「大杉! オレはこんな体になったけどもう少しやってみるよ」と真摯な言葉を掛けた。

 たけしは冒頭のあいさつで「大杉漣さんのことがあるから、くだらないことばかり言えない」と言っていたが、式が始まれば際どいジョークを連発。沈んだ時間ではなく楽しい時間を、天国にいる受賞者に届けていた。

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