前代未聞の襲名取りやめ 好楽の弟子・好の助、九蔵襲名に林家正蔵が直前で“待った”

スポーツ報知
8代目・林家正蔵の三十七回忌の命日にお墓参りした三遊亭好楽(右)と三遊亭好の助

 落語家・三遊亭好楽(71)の3番弟子で5月に真打ちに昇進する三遊亭好の助(35)の襲名が取りやめになったことが2日、分かった。真打ち昇進を機に、好楽の前名でもある林家九蔵(くぞう)を3代目として襲名することを昨年末に発表していたが、2月に入り林家正蔵(55)が異議を唱えた。好の助の師匠である好楽は熟慮し、襲名の取りやめを決断。「好の助」のまま真打ちに昇進することを決めた。

 落語家の華々しい門出となるはずの襲名が白紙になる前代未聞の出来事が起こった。「林家九蔵」は好楽が、8代目・林家正蔵(後の彦六)に入門し17年間名乗った名前。彦六没後に5代目・三遊亭円楽門下に移り、好楽と改名した。今回、弟子・好の助の真打ち昇進を機に、愛着のある前名・九蔵を贈ることを決め、8代目・正蔵の遺族や一門の兄弟子の林家木久扇(80)に相談し了解を取り付けた。

 さらに親交のあるアマチュア落語家に宮崎県限定で「九蔵」を名乗る許可を与えていたため、その人を2代目とカウント。好の助を3代目・九蔵とすることで、昨年末に、所属する「5代目円楽一門会」で発表。襲名に向けて準備していた。

 だが、2月に入り襲名を知った林家正蔵と正蔵の母・海老名香葉子さんから“物言い”がついた。香葉子さんから連絡を受け、好楽は東京・根岸の海老名家に出向き、3時間話し合って理解を求めたが、賛同を得ることはできなかった。

 思わぬ“横やり”に好楽は「根岸に行ってお話ししたけれど(香葉子さんに)『ダメですから』と言われた」と経緯を語った。そのまま襲名を通そうとも考えたというが、「落語の世界で一度、ゴタゴタした名前は良くない。かわいい弟子の門出だし、将来を考えて、(襲名せずに)好の助のまま真打ちに昇進させることにしました」と断腸の思いで決断。5月の襲名を前に、4月にパーティーを行うことで、既に招待状を発送。のぼりや後ろ幕、手ぬぐいや扇子なども「3代目・林家九蔵」で発注していたが、作り直すことになった。

 一方、正蔵はスポーツ報知の取材に「三遊亭に行かれたんだし、その一門で林家はおかしいでしょうというお話はしました。(落語)協会を出て行った方ですし、落語界であしき前例を作るのは良くないとは申し伝えました。名前を取り上げるとかそういうことは言っていません」と説明した。

 好の助は「今は師匠が悲しそうな顔をしているのが一番つらいです。師匠が名付けてくれた『好の助』の名前にも愛着を持っているので、一生懸命頑張ります」とけなげにコメントしている。

 〇…落語の襲名は、師匠が名乗っていた名跡や一門にある名跡を継ぐことがほとんどで、師匠亡き後は遺族や一門の了承を得ることが多い。「林家正蔵」の名跡は林家の留め名とされているが、初代からの師弟関係は5代目で途切れている。当代(9代目)と8代目は系統が違い、7代目は当代の祖父が名乗り、亡くなった後に、8代目が「一代限り」の約束で海老名家から名跡を借りた。7代目の長男である初代・林家三平が亡くなった後に名跡を返し、彦六を名乗った。代々の正蔵は芝居噺(はなし)、怪談噺を得意としており、8代目も怪談噺で評価を得ていたが7代目は爆笑派と言われている。7代目は柳家三平、7代目・柳家小三治を経て正蔵に。襲名の際に亭号を変えている。

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