役者歴20年 ココリコ田中が「引っ張りだこ俳優」になれた理由…主演映画「増山超能力師事務所…」31日公開

スポーツ報知
俳優としても存在感を示す「ココリコ」の田中直樹(カメラ・小泉 洋樹)

 お笑いコンビ「ココリコ」の田中直樹(46)が主演する映画「増山超能力師事務所 激情版は恋の味」(久万真路監督)が31日に公開される。本作は、昨年1月クールに放送された日本テレビ・読売テレビ系連続ドラマ「増山超能力師事務所」のオリジナル映画版。田中は芸人として活躍する一方で、2001年公開の主演映画「みんなのいえ」(三谷幸喜監督)など多くの作品に出演し、役者としても活動の場を広げてきた。引く手数多の“二刀流芸人”にとって俳優業とは。

 「増山超能力師事務所」の映画化が決定したのは、昨年のドラマの撮影中だった。撮影が終わり、3月頃にドラマ版と同じ久万監督、浅香航大(25)や柄本時生(28)といった実力派若手俳優らと映画の撮影が始まった。

 田中が演じるのは、「一級超能力師」の増山圭太郎。物を触って思念を読んだり、人の心の声を聞ける能力を使い、依頼人の悩みを解決する事務所の所長役で、いわば「できる男」だ。田中は「これまで振り回されたり、バタバタする役が多かった。『できる男』はあまり演じたことがなかったので難しかった」と振り返る。

 劇中では背筋を伸ばし、シュッとした印象。普段の自身と比べると「僕は全然違う。あんなに落ち着いていない。気をつけたのは、猫背。気を抜くと、すぐに猫背になるので…」と苦笑い。背が伸びた中2の頃から猫背という。

 超能力というと、SFのような派手なイメージを抱きがちだが、劇中の各キャラクターは人間臭く、恋もすれば仕事で悩んだりもする。「超能力を持っているから、みんな幸せかというとそうでもない。それを操るのは人間で、超能力を持つがゆえに苦しむ人もいる。突き詰めると人間ドラマ。そこが面白い」とPRした。

 実は大のコメディー映画好き。幼少期から「ピンク・パンサー」にはまり、最も好きな作品はジョン・キューザック主演の「やぶれかぶれ一発勝負」(1985年)。若手芸人時代、時間があれば映画にかじりついた。

 99年、コント師として人気者だった田中に転機が訪れた。テレビ朝日系「燃えよ!ロボコン」の通行人役で俳優デビューし、フジテレビ系「世にも奇妙な物語 秋の特別編『逆男』」で初主演。2年後、わずか映画出演2作目で三谷監督の「みんなのいえ」の主演に抜てきされ、日本アカデミー賞新人俳優賞に輝いた。「とても大きな仕事でした。経験がなかったので、ずっと三谷さんから稽古を受けていて、難しかったけれど演じる楽しさを教えてもらいました」

 コント師と俳優の二足のわらじ。一見、別世界に見えるが、共通点があるという。「どちらも自分でない人になるという意味では同じ。普段の自分に自信がないけど、違うキャラクターをもらったら自分でなくなる。そうなることで自信が芽生えたり、振っ切れたり、自分と違うことができる。そういうところが楽しい」

 俳優歴20年目。映画、ドラマで何度も主演を演じてきたが、「今も自信はないです。ずっとないと思います」と吐露。理由を聞くと、「毎シーン、毎カットごとに『今のでよかったのかな』とか思ってしまう」とし、「正解がそれぞれ(の作品ごとにあるから)じゃないですかね。求められるものにどれだけ応えられているのかな」。監督が思い描く世界観に少しでも近づきたい―、その一心で各作品と向き合ってきた。

 俳優として評価が高まる一方で、劇場でコントをする機会は減ったが、今年2月に東京・下北沢で相方の遠藤章造(46)とトークライブを行い、9年ぶりにネタを披露。観客の喜ぶ顔を見ながら、「コントがやっぱり好きだ」と改めて思った。

 現在、テレビのレギュラー番組は日本テレビ系「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」(日曜・後11時25分)、同局系「ZIP!」(月~金曜・前5時50分、木曜レギュラー)など4本。“二刀流芸人”への需要は増すばかりだ。今後については「どちらが向いているか分からないけど、コントも俳優もやっていけたらうれしい。声をかけていただいているうちが花だと思うので」。芸歴25年目にしてこの謙虚な姿勢が、作り手や見る側の心をつかむ田中の“超能力”なのかもしれない。

 ◆田中 直樹(たなか・なおき)1971年4月26日、大阪府豊中市出身。46歳。大阪府立桜塚高卒業後、デザイン系専門学校に入学。92年、小中で同級生だった遠藤章造と「ココリコ」を結成。ネタ作りとボケ担当。テレビ出演番組は、NHK「LIFE!~人生に捧げるコント~」(不定期・後10時)など。181センチ、65キロ。

 久万真路監督
「田中さんの演技の魅力は、気負わず、てらいもなく、演じているのに、印象に残る味わい深いところだと思います。増山という役は、田中さんにとっては初めての役どころだったと思いますが、優しさと包容力のある増山が現れたのも、田中さんの演技力と人柄のたまものだと感心しました。おなじみの超能力師たちのどこか愛嬌(あいきょう)のある活躍ぶりはもちろんのこと、テレビ版ではなかった、本格的な恋愛ものの作品に仕上がりました。テレビ版を見ていない方でも、存分に楽しめる作品です」

 ◆増山超能力師事務所 激情版は恋の味 あらすじ
 原作は「ストロベリーナイト」「ジウ」などで知られる人気作家・誉田哲也氏の小説。東京・日暮里にある増山超能力師事務所に所属する二級超能力師の高原篤志(浅香)は、仕事の失敗から調査に参加できず、腐りながら、姉妹が切り盛りする弁当屋に通う日々。ある日、その姉の夫が何者かに殺される事件が発生する。

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