北川悦吏子氏、次期朝ドラで「革命起こした」

スポーツ報知
北川悦吏子

 女優の永野芽郁(18)が主演するNHK連続テレビ小説「半分、青い。」(4月2日スタート、月~土曜・前8時)で、初めて朝ドラの脚本を担当している北川悦吏子氏(56)がこのほど取材会を開き、「朝ドラに革命を起こした」と語った。

 「ロングバケーション」(1996年)「愛していると言ってくれ」(95年)などで知られる“恋愛ドラマの神様”北川氏のオリジナル作品。高度成長期の終わりから現代にかけて岐阜と東京を舞台に、小学生で左耳の聴力を失った永野演じるヒロイン・鈴愛(すずめ)が失敗を恐れず、七転び八起きで駆け抜け、一大発明を成し遂げる姿を描く。

 北川氏が数年前に同局に持ち込んだ企画が実現した本作。12年に突発性難聴を発症し、本作ヒロイン同様に左耳を失聴した北川氏の経験や思いも投影されている。「劇中で、傘をさすと半分しか雨の音がしないというシーンが出てくる。これはドラマになると思った。タイトルと同時に、(構想が)ポンと出た」。2年前に企画が通り、台本作りに着手した。

 これまでにない句読点で終わるタイトル。CG映像を駆使し、ヒロインが胎児の頃から描かれることも初めてだ。「朝ドラに革命を起こしたと思った。自分で言うのも何ですが、すごく面白くて、ぶっ続けで5回連続で見た。タイトルも今までと比べると明らかに異端。フランス映画みたいにしゃれていて、めちゃくちゃかっこいい」と自賛した。出来上がった映像を見た娘も「これ、本当に朝ドラ?」と驚いたという。

 ヒロイン像は“ヒットの2大要素”をあえて外した。10年度「ゲゲゲの女房」以降、朝ドラは「実在の女性がモデル」「時代と戦う女性」が主流となってきたが、「そういうものを全部外して書いている。そういう意味ではチャレンジング。だからこそ面白いものが生まれるのではないか」と不安は微塵(みじん)も感じていない。

 デビュー25年にして、ホームドラマも全156話の長編も初挑戦。「1000本ノックみたい。15分のドラマで、民放の1時間の連ドラとも違うノウハウが要る。とにかく15分を攻め倒す。自分で書き始めうち内に、こういう手もあるのかと手数が増えてきた。いまだに増え続けていて、クリエーターとしてすごく面白い体験させてもらている」と意欲満々。

 本作では、ヒロインが驚いた時に発する「ふぎょぎょ」という造語が何度も登場する。これは北川氏が作ったもので、「自分で言葉を作るのが好き。“チャラ男”とこの世で初めて言ったのは私なんですよ。『愛してくれと言ってくれ』で『チャラ男』と言ったのを覚えている」と自負した。

 岐阜は18年過ごした自身の出身地。「18年間いた場所という強みは絶対ある。岐阜弁もネイティブなので、いくらでも書ける」と舞台に選んだ理由を語った。「実は岐阜の話は避けていたけど、ある年から自分はあそこで生まれて、今ここにいるんだと思い始めた。懐かしいような愛おしいような思いが湧いてきた。そういう揺れ動く感じも書けたら」

 永野については、昨年のオーディションの頃から「鈴愛はこの子だ」と直感。「早口な女の子がいいと思った。瞬時にコロコロ表情が変わって、動物に近い。鈴愛にぴったり」と独特な表現で称えた。

 また、ヒロインの幼なじみを演じる佐藤健(28)の演技を絶賛し、「健君が撮影に入る前に『もう北川さんの代表作はロンバケって言わせませんよ』と言ってくれた。若い人が私の本を読んでくれて意気込んでる姿がうれしかった」。

 脇を固める俳優陣も豪華。ヒロインの師匠となる少女漫画家を演じる豊川悦司(56)とは「Love Story」以来、17年ぶり3度目のタッグ。「『やっぱり、北川さんの本だよな』とおっしゃった。圧倒的な存在感で、役を作ってきた。すごい考えて、1個1個大事にやっている感じがする」

 一見、異例ずくめの本作だが、根底にあるのは、苦境があっても、発想を転換して乗り越えるという普遍のテーマ。家族愛を軸に恋愛、仕事が重なり、物語は展開していく。「恋愛でも家族でも、実は変わらないんだなと思った。生きる力を伝えたい。どういうことが起きても、生きてく力があるんだよという事を伝えたい」と、言葉に力を込めた。

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