本当の強さとは西城秀樹さんが教えてくれた
スポーツ報知

秀樹さんといえば、真っ先に思い出すのが、紅白歌合戦のリハーサル。12月29日からNHKホールに出場歌手が一斉に集まり、ステージから控室までの通路を慌ただしく行き来するが、秀樹さんだけはいつもロビーのソファにどかっと座り、たばこを吸いながら記者との雑談に興じてくれた。
大好きなお酒やゴルフの話、銀座での武勇伝、女性についての持論など。当時話題になっていた野口五郎の恋の行方について「結婚はまだだよ」と勝手にぶっちゃけ話も。入社したての20代の私にとっては、“ザッツ芸能人”の豪快な独演会が何よりの楽しみだった。
それだけに、最後の紅白出場から2年後の03年、1度目の脳梗塞からの復帰会見で突然カメラに背を向け、片隅で嗚咽(おえつ)し続ける姿は衝撃的だった。
09年のインタビューでは、紅白の時と同じ人とは思えないほど穏やかな表情で「僕は弱い人間だから」と口にした。「昔はかっこつけてたけど、今は自然に生きられるようになった」。激しいシャウトが代名詞だった秀樹さんが「鳥のさえずりとかが、いとおしくなってね」と言うのが少し笑えたが、「そんなことに命の大切さを感じるんだよ」という言葉がしみた。
2度目に倒れた後はさらに重い後遺症を患ったが、それでも「同じ病気の人たちを勇気づけられたら」と表舞台に立ち続けた。60歳の記念ライブで発した「ヒデキ、還暦!」の決めゼリフ。バーモントカレーのCMの時の張りのある声ではなかったが、弱さも受け入れてステージに立つ姿に、人間としての本当の強さを教えられた。(芸能デスク・高橋 誠司)