大林宣彦監督、20年ぶり故郷尾道で80歳新作 肺がん、余命3か月宣告から2年

スポーツ報知
新作映画を撮ることになった大林宣彦監督

 日本を代表する映画監督で、がん闘病中の大林宣彦氏(80)の新作が、「海辺の映画館―キネマの玉手箱―(仮題)」(来春公開予定)となることが19日、分かった。戦争と広島の原爆を扱った内容で、7月1日に故郷、広島・尾道で撮影に入る。

 2016年8月にステージ4の肺がんで余命3か月の宣告を受けて2年。大林監督はかねて「余命は未定。がんごときじゃ死なねえ」と答えている。関係者によると、最近の大林監督は多少のアルコールも取りつつ、食欲旺盛で顔色も良く気力、体力ともに充実。月末の現地入り、クランクインの日を待ちわびており「驚くほどお元気です」と話す。手術はせず、抗がん剤治療で症状を改善してきた。

 新作は昨年12月に公開された「花筐/HANAGATAMI」以来。脚本は監督自ら手掛けるオリジナルで、ロケ地が尾道メインになるのは約20年ぶり。かつての和製ミュージカル映画を映画館で見ていた若者たちがタイムスリップ。巡業中に広島で被爆する実在した劇団「桜隊」のメンバーと出会い、“その時”に向かって突き進む中での苦悩やドラマが描かれる。

 終戦時、7歳だった大林氏は“生き残り”の葛藤を抱え、自身を「平和孤児」と表現。広島の原爆を描くことが長年の使命でもあった。出演者は大林作品に出演歴のある演技派が顔をそろえるが後日、正式発表される。

 大林監督は80歳という高齢に加え、抗がん剤の副作用で痩せ、ステッキが必要だった時も。しかし「あと30年は生きて映画を撮り続ける」「私の体の中にはがんという同居人がいる。かわいいやつ」と舞台あいさつや講演で話すなど、末期がんの診断がウソだったよう。

 関係者によると「監督はさらに次の作品のプランも具体的に練るほど」と体力の回復を強調するが、真夏に命懸けの撮影になる。スタッフは監督の体調に細心の注意を払いながら尾道ロケに臨む。

 ◆大林 宣彦(おおばやし・のぶひこ)1938年1月9日、広島・尾道市生まれ。80歳。CMディレクターを経て77年「HOUSE ハウス」で監督デビュー。近作は戦争を題材にした作品を手掛けることが増えている。「花筐/HANAGATAMI」は毎日映画コンクールで日本映画大賞を受賞。04年紫綬褒章、09年旭日小綬章を受章。

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