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山田洋次監督が挑む85歳の新境地「思い続けて60年。寅さんの原点」

2017年3月20日16時0分  スポーツ報知
  • 音楽劇「マリウス」の演出を手掛けた山田洋次監督。気分転換でのばしているひげも、結構似合っています

 映画の巨匠、山田洋次監督(85)が演出を手掛けた音楽劇「マリウス」(27日まで。東京・日生劇場)が話題を呼んでいる。ご存じ、フランスの国民的作家マルセル・パニョルの同名戯曲が原作で初演は1929年。世界史的には、ちょうど世界大恐慌が起きたころだ。

 仏マルセイユを舞台に、海外に夢をはせるマリウス(今井翼)とファニー(瀧本美織)の悲恋物語。2人は両思いなのに、言葉で発せられるのは、気持ちとは裏腹なことばかり。そこにマリウスの父親(柄本明)、ファニーのことが大好きな性格の良いお金持ちの男(林家正蔵)など、個性の強い人物も多く登場し、飽きない展開だ。

 監督は約60年前に読んで、ずっと舞台化を思い描いていた。互いを思い合うがゆえの、すれ違い。当事者は真剣でも、他人から見ればこっけいに映ることもある。これが「男はつらいよ」の原点。「マリウスなければ、寅さんなし」なのだ。

 記憶力が尋常でない山田監督は、原作を読んだときのことを、昨日のように覚えていた。

 「助監督になって間もなくのころ。友達から『読んでみろ』と。その本を借りたのね。本当に面白くてね。フランス人の劇作家って、サルトルのイメージだったのが、落語みたいな笑いを感じて。新鮮で楽しくてね。それからですよ。この作品の世界観に憧れて。僕にとって、パニョルは先生。だから、とても感謝してるんですよ」

 60年来の夢。しかし、山田監督クラスともなれば、松竹で何でも好きなものをつくれるのではないのだろうか。

 「やりたい気持ちが強ければいい、というものでもないのね。僕だって、もし渥美清さんとの出会いがなければ、全然違った監督人生になっていただろうし。運命とか、巡り合わせとか言うけれど、決して必然というものはないとも思うのね。これだけ長い間、松竹にいたからこそ、今回もできたわけだからね」

 85歳の新境地。5月27日公開の新作「家族はつらいよ2」を控えながら、劇団前進座「裏長屋騒動記」(5月、国立劇場)の脚本・監修も担当するなどスケジュールはびっしり。こちらは落語「らくだ」「井戸の茶碗」をもとにした内容で、江戸庶民の生活の中から沸き起こる珍騒動を描いた喜劇になるそうだ。

 「もっともっと落語の奥深さを描けないか、と思っていたのね。忙しい? そんなことはないよ。だって好きなことを考えたり、書いたりするのって本当に楽しいことだからね」と平然と答える人だった。(内野 小百美)

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