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物作りに必要なものとは? BSフジ・亀山千広社長が教えてくれた大切な「何か」

2017年10月3日18時0分  スポーツ報知
  • BSフジ社長として再始動した亀山千広前フジテレビ社長

 「人たらし」という言葉がある。本来は人をだますという悪い意味だが、今は「なんとなく周りに人が集まってくる楽しい人」的な意味で使われる。「人たらしの天才」なんて呼ばれる人気者が、あなたの周囲にも必ず一人はいるはずだ。

 そんな言葉がピッタリの人物に久々に再会した。2日、都内で懇親会を開いたBSフジの亀山千広社長(61)。6月28日で4年間務めたフジテレビの社長を退任し、BSフジ社長に就任。3か月を経てのごあいさつということで、各社の記者を都内のスタジオの会議室に招き、ざっくばらんに話す機会が設けられた。

 「BSという(系列でなく)全国一波の強みを生かしたい。テレビの醍醐(だいご)味を伝えたいんです」とメガネの奥の優しい目を輝かせた亀山氏。「コンテンツ・ビジネスで勝負したい。BSの力を使って、向こう3年くらいで基礎をつくって、(映画化まで含めたヒット番組の)パッケージ・コンテンツを1、2年のうちに作っていきたい。来年、(より高画質の)4Kが始まるのは、大きなビジネス・チャンスと捉えています」と続けた。

 「パッケージ・コンテンツ」という言葉に、フジテレビ時代、ドラマプロデューサーとして「ロングバケーション」「ビーチボーイズ」「踊る大捜査線」など高視聴率ドラマを次々と手掛けたヒットメーカーのセンス健在を感じ取ったし、聞いているこちらまで元気にする熱い口調に「そうそう、亀山さんはこういう人だよなあ」と改めて思った。集まった約30人の記者も、まさに「たらされた」感じで笑顔に。“亀山節”にじっと聞き入っていた。

 フジテレビ社長としての4年間は苦難の道のりだった。2013年、制作畑のスターとして社長に就任も、4年間で広告収入など本業の利益を示す営業利益を就任時から約4分の1に減少させた責任をとって辞任した。

 5月26日のフジテレビ社長としての最後の定例会見。「数字が全て。私になってから視聴率など、数字が作れなかったことに非常に責任を感じています」という退任あいさつも昨日のことのように覚えている。

 それでも、亀山社長時のフジの定例会見が、とても楽しかったのは事実だ。同社の看板枠「月9」制作時の秘話を明かし、同じくトレンディドラマ全盛時の立役者・大多亮常務(58)に「そのへん、大多さんに聞いてもらえば…」と話を振る。「亀山さんはぁ―」という妙になれなれしいベテラン記者の問いかけにも笑顔で「〇〇さんのおっしゃることはわかるんだけど…」とざっくばらんに答え、SMAP分裂時に飛び出した「フジにはSMAP番組がありませんが…」という不勉強な質問にも「『おじゃMAP!!』がありまして~」と、苦笑しながらも穏やかに答えていた。

 私自身も7月末に都内のホテルで行われたフジテレビの懇親会の席上、就任したてのBSフジ社長としてゲスト出席していた亀山氏に「『プロ野球ニュース』をシーズン中、毎日見てます。最高です」と話しかけ、「あの番組はCS放送(フジテレビONE)ですけどね~」と返され、沈黙。「でも、本当に野球が好きなスタッフが作っているから、とても、いい番組になってますよね」と続けてもらい、救われた気持ちになったことを覚えている。

 「躍る大捜査線」など大作プロデュース時にあらゆる種類の人間と付き合い、苦渋もなめただろう経験から培われた柔らかい人当たりと誰とでも対等の土俵に下りて話してくれる人間力。視聴率低迷の反面、サロン的な和やかな空気が流れていたフジテレビの会見が、この日の会議室でも再現されていた。

 「とにかく、コンテンツの魅力。コンテンツ重視でやっていきたい。BSフジのオリジナル・ドラマ制作も当然、するつもりです。来年くらいに新シリーズを言えたらと思います」―。経営者としてより一プロデューサー、制作者としての言葉を笑顔で口にした亀山社長。そこには80年代にフジテレビを再生させたキャッチフレーズ「楽しくなければテレビじゃない」の精神が脈々と流れていた。

 こんな場面もあった。全話平均視聴率14・8%と今夏の視聴率ナンバー1ドラマに輝いた古巣の「月9」ドラマ「コード・ブルー―ドクターヘリ緊急救命―THE THIRD SEASON」について聞かれ、「今、俺にそれを聞くの?」と笑った亀山社長。「好調、おめでとうございます」まずは笑顔を見せると、ヒットの要因についても「きっちり真剣にチームを作ったドラマは見応えがあるなって気がしました」と結局、“きっちりと”分析してくれた。

 制作畑のエースから経営陣へという亀山氏と同じルートをたどる形で制作・編成の総責任者となったフジテレビの石原隆編成統括局長(56)も「コード・ブルー」ヒットの要因について聞いた際、こう答えた。「プロデューサーの増本淳という男は24時間『コード・ブルー』のことを考えている男なんです。制作サイドにそういう人間がいる作品の熱さは、必ず視聴者に伝わると思っています」―。

 経営者としてどうだったかは、この際、置いておこう。希代のプロデューサーが教えてくれたのは「本気と熱さ」―。物作りに絶対に必要な「何か」が今、こうして記事を書いている指先にも確かに伝わってきた気がする。(記者コラム・中村 健吾)

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