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三遊亭から林家へ異例の改名 好楽の弟子・好の助が真打ち昇進で“林家九蔵”を名乗る理由は…?

2018年2月5日11時0分  スポーツ報知
  • 3代目林家九蔵を襲名する三遊亭好の助(左)は師匠の三遊亭好楽とともに、林家彦六(8代目・林家正蔵)の命日に墓前で襲名を報告した

 落語家・三遊亭好楽(71)の3番弟子・好の助(35)が5月に真打ちに昇進することが決定した。前座、二ツ目を経て真打ちになれば一人前とされる落語界ではおめでたい話題だ。

 そして、真打ちを機に襲名する名前が話題を呼んでいる。3代目・林家九蔵(くぞう)を名乗る。好の助が所属する「5代目円楽一門会」の約60人の落語家は全員が三遊亭で、今回の襲名で初めて、林家を名乗る落語家が誕生する。

 なぜ、林家? なぜ、3代目? 数々の疑問が浮かぶ異例の襲名は、師匠・好楽のプランだった。九蔵は好楽の前名で、8代目・林家正蔵(後の彦六)に弟子入りし名乗り、その名前のまま真打ちに昇進。日本テレビ系「笑点」にも九蔵の名前で出演していた。その後、彦六が亡くなり、5代目三遊亭円楽の門下に移り好楽に改名した。好楽は「17年間名乗っていたこの名前(九蔵)が大好きでね。みんなから“きゅうちゃん”“きゅうぼう”って呼ばれてね。愛着のある名前だから、情熱的な弟子(好の助)にあげたくなった」と説明した。

 今回の襲名を進めるにあたり、好楽は彦六の遺族、彦六一門の兄弟子の林家木久扇(80)にも報告し筋を通した。さらに連絡を取った人物がいる。宮崎・延岡でアマチュア落語家として活動する横山龍児さんだ。好楽は横山さんと、5代目円楽を通じ長年懇意にしており、一時はプロの落語家を目指していた横山さんに、宮崎限定で「林家九蔵」を名乗る許可を与えていた。今回の襲名を機に「(横山さんに)電話して、かわいい弟子に九蔵をあげるから、返してって」。アマチュア落語家を代数に数えるのも極めて異例だが、好の助が3代目となった。

 驚いたのは好の助だ。「戸惑いますよ。3代目だし、林家だし。あわよくば好楽だと思っていたのに」。16年12月に、2年後の真打ち昇進を内々に告げられていた。襲名を聞いたのは昨年9月だった。「師匠、そろそろお名前を(決めてください)とお願いしたんです」。好楽からはその日の深夜に電話があった。「名前を決めたから。3代目・林家九蔵。じゃあ頑張ってね」。好楽の行きつけのバーのトイレからの電話。予期せぬ告知に真偽を計りかねた。数日後、楽屋で師匠に確認し、冗談でないことを知った。昨年末の5代目円楽一門会の忘年会で正式発表された。

 もちろん、好楽は思いつきで決めたわけでない。「この子ならインパクトの強い名前がいいだろうと思った。一番かわいい弟子だからね」。落語家は昔は師匠の家に住み込みで修業をするのが通例だった。その後、通い弟子のスタイルが増えていったが、好楽は弟子に毎日訪問する代わりに、毎日定時連絡することを義務づけている。「好の助は、365日、一日も欠かさず、午前10時に連絡をくれたんです。当時はそれが普通だと思っていたけれど、その後の弟子は違ってね。改めて好の助がしっかりしていたんだと思いましたよ」。好の助以降入門した7人の弟子で、1日も忘れることなく電話をする弟子はいなかったという。

 好の助は、好楽の教えを守り、協会の垣根を越えて様々な落語家を訪ね噺を教えてもらい、持ちネタを200ほどに増やした。さらに好楽の自宅兼寄席の「池之端しのぶ亭」でも2年間、毎月、勉強会を開催するなど真剣に落語に取り組む姿勢も好楽は評価している。

 好の助の父はマジックコンビ「ナポレオンズ」のボナ植木(65)だ。好の助は「高校の時に、逃げ道として『マジシャンになりたい』って言ったら、父親に『お前に道具は何もやんない』と言われて。ああ、俺、クビ回せないのかと思った」。その後、武蔵大では体育会ホッケー部で活躍、卒業後に3か月間、会社勤めをしたが、芸人への夢は捨てきれずに、入門先を探し様々な落語会をはしごした。「一門会を見に行けば、(師匠だけでなく)兄弟子も分かるし…。好楽一門会は、にぎやかで高座でもみんなニコニコ出てくるんです。楽屋からも笑い声が聞こえて…」。雰囲気の良さに惹かれ入門を決意した。

 襲名するありがたさも感じている。「おかみさんも、師匠のことを“きゅうちゃん”と呼んでいますしね。おかみさんが『九蔵の名前、誰かにあげればいいのに』と言ったら、師匠が『俺の大事な名前だからあげられない』って話していたのを、前座の頃に聞いていたので…」。改めて前座時代の師匠とおかみさんの会話を思い出し、感謝の気持ちを強くした。

 好楽の九蔵時代の師匠・正蔵は、3代目・三遊亭円楽、5代目・蝶花楼馬楽を経て1950年に8代目・正蔵を襲名した。死後には7代目・正蔵の長男・三平の海老名家に名跡を返す「一代限り」の約束だった。だが、三平が80年に亡くなったために、名跡を海老名家に返上し、彦六を名乗った。「一代限り」の配慮からほとんどの弟子は、真打ちを機に林家を名乗らせていない。春風亭柳朝、橘家文蔵、八光亭春輔ら、一門は様々な亭号を名乗っている。好楽は「師匠も色々な名前を名乗ったし、一門がバラエティーにとんでいるのは、師匠の広い気持ちで、落語界の彩りを考えていたのでは…」と話している。

 3代目九蔵襲名を控えて好の助は「幸い九蔵時代の師匠の落語を知らないので、プレッシャーもない。伸び伸び落語をやっていきたい」と決意表明した。彦六の三十七回忌になる命日の1月29日には彦六が眠る池袋・盛泰寺に好楽と2人で墓参りして、襲名を報告した。墓前で手を合わせ「林家になります。温かい目で見守ってください」とお願いした。三遊亭ばかりの「5代目円楽一門会」で一人林家を名乗る3代目・林家九蔵がどのように“彩り”を添えていくか。師匠の思いを胸に新たな道を切り開いていくつもりだ。(コンテンツ編集部・高柳 義人)

 ◆三遊亭好の助改め3代目林家九蔵真打昇進襲名披露興行

 ▼5月1日~10日、お江戸両国亭「両国寄席」(午後6時開演) ※2~6日は特別興行(午後1時30分開演)もあり

 ▼6月23日、よみうりホール 木久扇、鶴瓶、好楽、円楽、王楽、ナポレオンズ

 ▼7月8日、昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)小ホール 鶴光、好楽、兼好、ナポレオンズ

 ▼12月15日 江戸川区・グリーンパレス 好太郎、楽生、萬橘、好吉

 ◆好楽一門 (1)好太郎〈らっ好〉(2)兼好〈兼太郎〉〈じゃんけん〉〈しゅりけん〉(3)好の助(4)好吉(5)鯛好(6)とむ(7)好也(8)はち好(9)西村(10)じゅうべえ ※王楽(好楽の長男、5代目・円楽に入門したため弟弟子になる)かっこ内の数字は弟子入りの順、〈 〉は孫弟子

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