【巨人】阿部原点「やる時はやる」ドラ1鍬原覚悟「勝って当たり前」中大の先輩・後輩が対談

スポーツ報知
対談した阿部(右)に「最後に笑えるように頑張れ」という意味を込めて手のひらに書かれた「笑」の文字を見せる鍬原(カメラ・中島 傑)

 巨人・阿部慎之助内野手(38)と、ドラフト1位の鍬原拓也投手(21)が、2018年の新春に“中大先輩・後輩対談”として顔を合わせた。ともにドラフト1位で巨人入り。同じく中大OBの高木豊氏(59=スポーツ報知評論家)を進行役に迎え、1位入団の重圧や「中大魂」、プロでの成功の秘訣(ひけつ)などについて、たっぷりと語り合った。(取材・構成=名取広紀、水井基博、山崎智、尾形圭亮)

 高木(以下、高)「ドラフト1位指名の瞬間、どんな気持ちだった?」

 鍬原(以下、鍬)「いやもう、信じられなかったです。1位じゃないと思っていたので。『2位の初めの方でかかれば』と思っていて、巨人から1位だったので、『ええっ!』って。驚きとうれしさが交じって、もうよく分からなかったです」

 高「俺らの時の巨人のドラフト1位って、本当に憧れのスーパースターが指名されるという感じだった。慎之助は逆指名だったけど、やっぱりホッとした?」

 阿部(以下、阿)「『手違いがあって指名されなかったらどうしよう』とは思いましたね」

 高「後輩の率直な印象は? プロとして大成するとか、色々あると思うけど」

 阿「環境にもよりますけど、今だったら智之(菅野)とかいるから、ついていく先輩を間違えなければ大丈夫です」

 高「慎之助の印象は?」

 鍬「小さい頃から憧れていた選手の一人なので、今こうやって横にいるのが不思議というか…」

 高「慎之助の本塁打を見て野球を始めたんだって」

 阿「トシ取ったな、と思いますよね(笑い)。中大の後輩は今は少なくなってきましたし、そんな中で1位で入ったのはうれしい」

 高「1位の重圧は?」

 鍬「あります。期待されている以上、結果を残さないといけないとか、そういう不安もありますし、まだまだ体も小さいので、その中でどれだけできるかと…」

 高「慎之助は、新人の時に球を受けた投手で誰が一番衝撃だった?」

 阿「上原さん(浩治=前カブス)、(高橋)尚さん(尚成=現スポーツ報知評論家)、入来さん(祐作=現ソフトバンク3軍投手コーチ)、柏田さん(貴史=現巨人スカウト)。すごい投手がいっぱいいました」

 高「受けてみて、アマチュアと何が一番違った?」

 阿「変化球のキレです」

 高「じゃあ鍬原へのアドバイスとしては『変化球を磨いた方がいい』と」

 阿「150キロを超えても、みんな打ちますから、今の打者は。だから、変化球をどう操れるかですよ」

 鍬「一応、手先は器用なんですけど、プロで通用する球は、自分の中でまだ自信がないというか。スライダーが一番自信はあるんですが」

 高「変化球は何種類?」

 鍬「5種類です。スライダーが縦と横、カーブとフォークとシンカーです」

 阿「理想はシンカーよりフォーク。シンカーはついていける。フォークがある投手は強い。横の変化はみんな対応しているから」

 高「もう投手の球を受けることはないの? 鍬原が初先発の時、マスクかぶってあげたら?」

 阿「捕れることは捕れると思いますけど、100球くらい捕ったら、次の日もう立てない。足首が痛くなっちゃう」

 高「受けてもらいたいよなぁ? 憧れの選手に」

 鍬「いや…緊張して投げられないです」

先発こだわり2億円目指せ ―在学中に一番キツかった練習は?

 阿「俺はないな(笑い)」

 鍬「罰走が一番キツかったです。球場の周りを一周1分以内。3人1組で、一番速いやつが1分以内、3人目が1分5秒以内に入るというのを10周、というのがありました」

 高「俺は、夜中にラーメン作らされたり、麻雀したりで寝られないことがあったなぁ…それが一番キツかった」

 阿「でも、そういう時代の方がたくさんプロを輩出してましたよね。そういえば、僕らの時は寮で犬を飼ってるやつがいましたよ(笑い)」

 高「『中大魂』って何だと思う?」

 鍬「『自主性』じゃないですかね。自分でやる力をつける場だったかな、と。自分を持つことは大事だな、と感じています」

 阿「一見、やる気なさそうだけど、やる時はやる。チームワークとかはない、かな。個の力を、どれだけ出すか」

 高「巨人の印象は?」

 鍬「常に勝たないといけないプレッシャーの中でやっている、というイメージです。小さい頃からジャイアンツの試合を見ていて、勝って当たり前だと思っていました。その中でやっているというのがすごいな、と」

 高「中大とはかけ離れているよな」

 鍬「『勝って当たり前』とは思われていなかったので、そういう重圧はなかったです」

 阿「巨人で実際にやってみれば、もっと感じると思う。大学で先発やってたんだから、先発にこだわった方がいい。1週間に1回頑張れば、すぐに年俸1億円、2億円までいくよ」

 高「投手は花形だよな。俺らなんか、ただの球拾いだもん。投手はダイヤモンドの中心にいるトップスター。だから、打たれると余計に『しっかりしろよ』と思うんだけど。一塁手の先輩がエラーしたら『ちゃんと守ってください』くらいは言っていいよ」

 阿「打たれたら、ツバ吐いて、顔に出してやるよ(笑い)」

 鍬「いやもう…けん制も投げられないです…」

 ◆高木 豊(たかぎ・ゆたか)1958年10月22日、山口県防府市生まれ。59歳。多々良学園(現高川学園)高から中大入り。大学では1年春から東都大学リーグ戦に出場し、通算115安打は歴代2位の記録。80年のドラフト3位で大洋(現DeNA)入り。大洋では二塁手を務め、84年には56盗塁で盗塁王を獲得。94年に日本ハム移籍。引退後は横浜(現DeNA)、アテネ五輪野球日本代表の内野守備走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチ、1軍チーフ兼打撃コーチなどを歴任。

 ◆阿部 慎之助(あべ・しんのすけ)1979年3月20日、千葉県生まれ。38歳。小学1年から浦小クラブで野球を始め、中学では浦安シニアに所属。東京・安田学園高では通算38本塁打をマーク。中大では1年春から正捕手となり、日本代表にも抜てきされた。プロ、アマ混成チームで臨んだ00年シドニー五輪にも出場。その年のドラフト1位(逆指名)で巨人入り。タイトルは首位打者、打点王、最高出塁率(いずれも12年)。180センチ、97キロ。右投左打。

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