【巨人】元チーフスカウト・中村和久氏が死去 70歳 「最後の日」に届いた阿部慎之助からの手紙  

スポーツ報知
中村和久氏

 巨人の元スカウト部専任次長として元木大介、阿部慎之助、高橋尚成らの獲得に尽力してきたベースボールアナリストの中村和久氏が17日午前10時5分、都内の病院で死去した。70歳だった。親交のあったスポーツ報知の元アマ野球担当記者が悼んだ。

 チーフスカウトだった中村さんは季節を問わず、いつも真っ黒に日焼けしていた。どんなに強烈な太陽光線が降り注ぐ中でも、ドラフト候補選手を視察する際には日よけの下ではなく、客席の前方に陣取って見守るからだ。まだドラフトに逆指名制度があった時代。「選手は恋人だからね。練習中や試合中は、恋人と同じ日差しを浴びていたいんだよ」。絶対に獲る―と決めた選手がいれば連日、グラウンドに足を運び、ひたすら熱視線を注ぐ。それが中村さん流の誠意だった。

 上位候補でなくても高校球界に気になる選手がいると、指導者の携帯ではなく、わざと学校の代表番号に電話し、アポイントを取った。「読売巨人軍の中村ですが、視察させていただきたい選手がおりまして」。巨人から電話が来た―という一報は、すぐに校内を駆けめぐる。それが選手や指導者の励みになる。そこまで考えての、粋なはからいだった。

 生前、宝物があると話してくれた。2009年12月。球団への最後の出社を終え、自宅に戻ると一通の封書が届いていた。差出人は阿部慎之助だった。「25年間、スカウト活動お疲れさまでした」。便せんには自筆で丁寧にそう書かれていたという。「本当にいい男なんだ。まだまだ巨人を引っ張っていってほしいよね」。あの穏やかな声がもう聞けないなんて。早すぎる。(野球デスク・加藤 弘士)

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