【巨人】阿部、現役1年でも長く!38歳まだまだ 中村スカウトに恩返し

スポーツ報知
阿部は苦しそうな表情を見せながらバットを振り込んだ(カメラ・中島 傑)

 【米グアム19日=ペン・後藤亮太、カメラ・中島傑】巨人の阿部慎之助内野手(38)が亡き恩人の思いを背負い、1年でも長く現役生活を続けることを誓った。中大から入団した時の担当スカウトだった中村和久氏(享年70)が17日に死去。生前、「はいつくばってでも(現役を)やれ」と猛ゲキを受けたことを明かし、「長くやることでしか恩返しはできない」と決意表明。レジェンドと呼ばれるまで、グラウンドに立ち続ける。

 額に大量の汗を浮かべながら、阿部は黙々とバットを振り込んだ。昨年末からグアムで行っている単独自主トレ。30度近い気温の中、ロングティーや正面からのトス打撃、ノックやダッシュなどを順調にこなした。「確認作業はできている。後は走る強度とかも上げていけたら」とうなずいた。

 耳に残っている言葉が、チーム最年長となった阿部を奮い立たせている。00年に中大から逆指名で巨人に入団した時、担当スカウトだった中村和久氏が亡くなった。「(中大時代に)朝、球場へ行ったらスタンドで待っていて、個人練習が終わるまで帰らずに見ていてくれた。気にかけてくれた中村さんに誠意を感じたので巨人を逆指名させていただいた」と話すほどの恩人の突然の訃報だった。

 最後に言葉を交わしたのは昨季終了後の10月。電話口の向こう側からこう言われたという。

 「打席に歩いていけるまで野球をやれ。はいつくばってでもやれ。それくらい長く(現役を)続けろ」

 昨季は通算2000安打を達成するなど節目のシーズンとなったが、まだまだ上を目指せというゲキ。阿部は「いつも終わりかけのやつのことを言葉で奮起させてくれていた。長くやることでしか恩返しはできない」。最近は、引き際の美学として輝きを放ちながら潔く身を引くことを口にしたこともあった。それを改め、1年でも長く野球を続けることで中村スカウトに報いることを心に誓った。

 1年でも長く野球を続ける―。それを意識する時に思い浮かぶのは、前中日監督で44歳まで兼任監督として現役を続けた谷繁元信氏との会話だという。以前、同氏に「何歳から体がきつくなったか」と質問すると意外な答えが返ってきた。「39歳まできつくて、40歳を超えたらなんか知らないけど体が楽になるよ」。3月20日で39歳になる。“谷繁理論”をあてはめると、今季踏ん張った先に、新たな世界が開けるかもしれない。

 サッカー界では50歳の三浦知良がJ2横浜Cで契約更新するなど、プレーするだけで記録が生まれるレジェンド級アスリートは何人もいる。背番号10は「今後の目標は稀(まれ)な人になることだな」と笑顔。王、長嶋以来、巨人の生え抜きとしては史上3人目の通算400本塁打まで残り12本で迎える18年シーズン。唯一無二の存在として、巨人打線を引っ張ってくれるはずだ。

 ◆故中村和久氏 巨人の元スカウト部専任次長。1947年10月6日、三重県生まれ。高田高、名商大を経て、社会人野球のリッカーに入社。都市対抗野球には2度出場。74年からマネジャー、コーチなどを歴任し、82年から監督を務めた。85年、巨人スカウトに転身。アマチュア時代に築いた幅広い人脈と人柄に加え、獲ると決めたら練習に通い詰める熱心さで元木大介、岡島秀樹、高橋尚成、阿部慎之助、野間口貴彦、亀井義行(善行)、長野久義ら多くの選手の指名、入団に尽力した。

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