【巨人】開幕投手の菅野が激白「唯一痛みを共有できる」坂本との絆 2人で悲願の日本一へ

スポーツ報知
誰もいない東京ドームのマウンドに立つ菅野。開幕戦を前に静かに闘志を燃やした(カメラ・矢口 亨)

 プロ野球は30日、セ・パ同時に開幕する。阪神戦(東京D)で開幕投手を務める巨人・菅野智之投手(28)が、スポーツ報知に、今季にかける熱い思いを激白した。1歳年上の主将・坂本勇について「唯一、痛みを共有できる存在」と知られざる信頼関係を明かし、2人で引っ張って優勝に導く決意を語った。過去、開幕投手として3戦全勝で準備は万全。由伸巨人は、投打の大黒柱の固い絆で新たな歴史を築く。(取材・構成=片岡 優帆)

 やるべき準備は全てやった。開幕投手前日。菅野は落ち着いていた。昨秋に異例の早さで大役に決定。オフから責任感を持って行動してきた自負がある。新球の高速シンカーも完成し、万全の状態で臨む。

 「『今年の菅野は手ごわいな』と思われるような投球をしたい。僕は(開幕戦を)143分の1とは考えていない。しっかり強い気持ちを持って投げたいです」

 昨年は11年ぶりBクラスの4位。苦境でも先頭に立って声を出す坂本勇の姿を見てきた。エースとして責任を感じていた菅野はシーズン後、選手会長に就任。優勝のために何ができるか、坂本勇と何度も議論を重ねてきた。

 「勇人さんは前まではあまり言わなかったけど、厳しいことを言うようになった。2人で話して、こんな言い方がいいか分からないけど、メディアもうまく使ってどんどん発信していこうと。勝ちたいので」

 課題は若手の底上げ。後輩に直接言うのはもちろん、メディアを通しても意図的にメッセージを発信し、意識改革を促した。菅野が「若い選手は貪欲さが欠けている」、坂本勇が「仲良しこよしでやっている場合じゃない」など、2人はシンクロするように若手への厳しい言葉を並べてきた。

 「それだけ僕と勇人さんは考えてやってきたつもりです。だから、僕と勇人さんにしか分からないものがある。勇人さんは唯一、分かり合える。僕が唯一、痛みを共有できる存在です」

 知られざる固い絆で結ばれた2人は、自主トレで後輩を連れて厳しく接した。菅野は「彼らの人生を預かっている」と覚悟を決め、心を鬼にした。球界を代表する投打の大黒柱にしか分からない思いが、そこにはある。菅野は今でも、チームを少しでも良くするために坂本勇と密に意見交換。全てが日本一のためだ。

 「やっぱり優勝したいですからね。優勝がどれだけ良いものか、僕も勇人さんも知っているけど、多くの若い選手はそれを知らない。僕は1、2年目(13、14年)は本当に幸せだった。勝つのが当たり前。ジャイアンツは強いなと思った。当時はこうして追う立場になるなんて思わなかった。でも、ここから優勝したら、達成感はすごいと思いますよ」

 坂本勇は菅野について「近くで見ていて、巨人が強くないといけない、と思ってプレーしている選手だなと思います」と大きな刺激を受けている。若手が先輩に積極的に質問する姿も見られ、高い意識がチーム内に浸透してきた。それでも、菅野は3年優勝から遠ざかる現実を受け止め、気を引き締める。本番はこれからだ。

 「やってきたことが(若手の台頭という)形になると一番いいんですけどね。投手ならいきなり160キロ投げられるようになるわけじゃない。急にバーンと上がるのは無理だし正直、去年と特別何かが変わったわけではない。だからこそ真価が問われているんです」

 若手の飛躍は、中心選手の活躍があってこそだと思っている。球場では投手、野手関係なく後輩に積極的に声をかけ、話しやすい雰囲気をつくる。坂本勇とチーム全体を見つつ、一番は自身の成績で引っ張り、チームを押し上げる決意だ。

 「少しでも若手がやりやすい環境をつくるようにしますが、まずは僕たちが頑張らないといけない。自分一人の力では優勝できない。でも若い選手に優勝させてもらうようでは、チームは強くならないですから」

 昨年は17勝5敗、防御率1・59、自己最多の187回1/3で最多勝、最優秀防御率、沢村賞を獲得。それでもチームが屈辱的な結果に終わり、悔しさが大きかった。今年は個人的に「20勝 200イニング」を掲げ、さらに上を目指す。

 「投手の成績はチームの成績に直結する部分が多いので、個人成績はガンガン意識してやっていきます」

 プロ2年目の14年から3年連続開幕投手で全勝。昨年はWBCの疲労を考慮してマイコラスが務めたが、開幕戦4勝目を挙げれば、別所毅彦、斎藤雅樹に並ぶ球団タイ記録の快挙だ。この日は「相手に勝つんだという気持ちを前面に出していきたい」と東京Dで短距離ダッシュなどで調整。最後に、若手が躍動してオープン戦1位となったチームの雰囲気を聞いた。

 「チームにとってもオープン戦1位というのはすごいプラス材料。投手では上原さんが帰ってきてくれたり、そういうところも僕は大きいと思うので、何とかそういうものを全て味方につけて、プラス材料に考えて臨めればと思います」

 互いに認め合う坂本勇と2人で先頭に立ち、新たな歴史を築く。悲願の日本一へ。熱い思いを胸に秘める菅野の挑戦が幕を開ける。

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