【巨人】菅野「一生忘れられない1勝」屈辱受け止めシンカー封印…苦悩の2週間で復活

スポーツ報知
5回2死一塁、田中を見逃しの三振に仕留めた菅野は、力強く拳を握った(カメラ・矢口 亨)

◆巨人10―2広島(13日・東京ドーム)

 エースが復活だ。巨人は菅野が8回6安打1失点、10奪三振の力投で今季初勝利。チームの連敗を6で止めた。新球シンカーを封印して原点の直球とフォークを駆使。6回のピンチでは3者連続Kを奪うなど、圧巻の投球を披露した。開幕戦から2戦連続5失点と苦しんだ右腕が、ついに本領発揮だ。

 勝利の重みをかみしめた。お立ち台に上がった菅野は引き締まった表情で本音を漏らした。「ホッとしています。長い野球人生で必ずこういう時が来ると思っていました。一生忘れることができない1勝になりました」。開幕から2試合連続5失点を乗り越え初白星。頼れるエースが帰ってきた。

 初回に丸の適時打で先制を許すも、直後に味方が5得点で逆転。最速152キロの直球にキレがあり、縦のフォークの効果も抜群だった。6回無死一、三塁から松山、安部、西川の3連続三振はピンチでギアを上げる本来の姿。チームの先発で今年初めて8回まで投げて10奪三振1失点に、「小林がうまく引っ張ってくれた」と女房役に感謝した。

 開幕から黒星先行の連敗はプロ初。野球人生最大の試練とも言える苦境で、菅野はある決断を下していた。

 「シンカーをやめて、フォークに切り替えます」

 前回6日のヤクルト戦(神宮)から新球・高速シンカーを封印していたのだ。阪神との開幕戦で完成度の低さを痛感。不調の原因はシンカーだけではないが、代わりに昨年まで使っていたフォークを解禁した。

 「もともとシンカーはダメだったらやめればいいと思っていた。ずっと言ってきたようにシンカーが投球のメインではないので」

 新球をスパッとやめ、キャッチボールでは原点の直球のキレや細かい制球を追求。きっかけを模索し、我慢強くフォームを修正してきた。先発投手は中6日、特に負けた時は気持ちの持ち方も難しい。菅野は自身2連敗後、覚悟を決めた。

 「切り替えるということはしないです。引きずります。ただ、落ち込むことはしない。落ち込んだからといって消えないですから。前を向いてやりますよ」

 現実から目を背けず、試合の録画はテレビで全てチェック。屈辱の投球を受け止めた。球場に来ればリーダーとして明るく振る舞い、ナインに積極的に声をかけた。その過程で、昨年交流戦での2戦連続KOを思い返し、こうも言った。

 「去年は(開幕から)上積みがあっての(5月30日の)楽天戦8失点、(6月6日の)西武戦5失点。それとは自分の中でワケが違う。今100%フルの状態でやられたなら本当にやばいなと思うけど、状態的にこれから上がっていく。それが唯一の心の支えです」

 苦悩の2週間でシンカーを捨て、技術を修正し、体調を整え、できることを積み重ねて復活した。試合後、「今はフォークがすごくいい状態。シンカーを投げていなかったら出なかった感覚です。多少遠回りはしましたが、決して間違いだったとは思わないです。(シンカーは)よくないんじゃないかという声もありましたが、投げることで得るものも大きい」と強調した。

 昨年7勝18敗と負け越した広島に大勝。自身の登板日から始まったチームの連敗は6で止まった。今年は20勝、200イニング、10完投が目標。「今日の投球で取り戻せたとは思っていませんし、まだまだこれから挽回できるように頑張ります」。苦しみを乗り越え、絶対エースはさらに強くなった。(片岡 優帆)

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