【巨人】山口俊、気迫の14K完投!出場停止中に筋トレ重視→“イチ流”初動負荷で進化

スポーツ報知
2失点完投で2勝目を挙げ、雄たけびを上げる山口俊(カメラ・堺 恒志)

◆DeNA2―3巨人(17日・新潟)

 寒さも疲労も気迫で吹き飛ばした。勝利の瞬間、山口俊は感情を爆発させた。9回2死一塁、低めのスプリットで中川大から空振りを奪い、自己最多14個目の三振。グラブを思い切りたたいてガッツポーズした。「結構いっぱいいっぱいです。最後は気持ちで投げました」。133球2失点の熱投は今季チーム初完投。気温12度で冷たい風の中、半袖姿のまま投げ抜き、古巣相手に初勝利を挙げた。

 3回に3安打2失点で逆転された。「状態は良くなかった」が、筒香ら主軸に内角攻めを徹底し、徐々に調子を上げた。「マウンドが低かったので、できるだけ軸足に体重を残そうと。尻上がりに良くなった」。6回2死から圧巻の6者連続三振。8回終了時、斎藤投手総合コーチに「いけます」と続投志願し、8連勝中のDeNAの勢いを止めた。

 昨年7月、グラウンド外の暴力トラブルが発覚し、残り試合の出場停止処分を受けた。反省の日々を過ごしながら、山口俊は普段なら行わない筋トレを導入。約4か月間、徹底的に全身の筋力を強化した。

 「7月から11月くらいまでは筋トレをとにかくやりました。今年に入ってからは筋トレをやっていないです。初動負荷だけですね」

 初動負荷トレとは専用のマシンを使って行い、運動の「初動」にピークの負荷をかけ、負荷を減少させていくことで筋肉の収縮速度を加速させてパワーの増大を図る。重いおもりを使う筋トレとは全く違う考え方だ。マリナーズ・イチローが長年継続し、故障から驚異的な回復を見せたことでも注目を浴びた。山口俊は18年シーズンで巻き返すため、謹慎期間で鍛えた筋肉を初動負荷で柔らかい動きに変える計画を実行した。

 「今は週1、2回、初動負荷専用のジムに通っています。疲労回復、体のしなやかさも出したいので。今の僕があるのは初動負荷のおかげだと思っています」

 試合終盤でもゆったりとしたフォーム、重い球を維持できるのは、イチロー流の鍛錬のたまもの。16年に菅野に並ぶセ・リーグ最多の5完投を記録した完投能力に、さらに磨きがかかった。謹慎期間が無駄な時間ではなかったと証明しているが「まだまだ。そう言えるように頑張らないといけないです」と慢心はない。

 前回登板となった10日のDeNA戦(東京D)は降板後、上原が逆転されて白星がつかなかった。だが、ベンチの最前列で声を出し続ける上原の姿を目に焼き付けた。「あれだけの大ベテランの方が。悔しいはずなのに。感じるものがありました」。1週間後、同じDeNAを相手に完投して、ブルペン陣を休ませた。

 由伸監督は「強いというか、馬力というか、スタミナは一番の持ち味。一人で投げきってくれると助かる」と絶賛。新潟では、89年に斎藤雅樹(現コーチ)が4試合連続完投となる完封勝利を挙げ、11試合連続完投勝利の日本記録につなげた。「最初から、最後まで投げきるつもりでした」という山口俊が、「ミスター完投伝説」ゆかりの地で本領を発揮した。(片岡 優帆)

 ◆新潟と斎藤雅樹 89年5月30日の新潟で開催された大洋(現DeNA)戦で完封勝利を挙げると、6月4日の阪神戦(東京D)、同10日のヤクルト戦(神宮)と3試合連続で完封勝利の偉業を成し遂げた。このシーズンはプロ野球記録の11試合連続完投勝利を達成して、初の20勝をマーク。新潟での完封劇から「平成の大エース」への扉は開いた。

 ◆「初動負荷理論」とは? 運動の「初動」時にピークの負荷をかけ、その負荷を適切に減少させていくことで筋肉の収縮速度を加速させ、パワーの増大を図る―という理論。94年に現在は鳥取市内のトレーニング研究施設「ワールドウィング」の代表を務める小山裕史氏が構築し、発表。マリナーズのイチローや元中日・山本昌氏ら多くのトップアスリートの指導に携わっている。

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