【巨人】吉川尚「抜けたら2点」ゴロを超美技好捕…まるでC菊池

スポーツ報知
4回2死満塁、外野に抜けそうな大山の打球を好捕、素早く一塁へ送球しピンチを救った吉川尚(カメラ・豊田 秀一)

◆阪神0―3巨人(21日・甲子園)

 巨人のピンチを尚輝が救った! 4回に自身の安打を含む5安打で3点を奪ったその裏、2死満塁のピンチで大山の一、二塁間への深いゴロをつかんで一塁に送球。中京学院大の先輩で、ゴールデン・グラブ賞5度の広島・菊池をほうふつとさせる美技を見せた。先発・田口は6回途中7安打無失点で今季初勝利。上原を方程式から外して初めて、沢村、マシソン、カミネロが登板し、それぞれ無失点の完封リレーで、今月3日に3連勝して以来のチームの連勝に貢献した。

 沸きかけた敵地・甲子園の歓声は、悲鳴ではなく、どよめきに変わった。まるで忍者。吉川尚が、ビッグプレーでピンチを救った。「必死にいった結果です。抜けていたら2点。最悪でも止めるという気持ちでした」。4回2死満塁。大山が放った打球は一、二塁間を抜けるかに見えたが、驚異的な瞬発力で追いつくと、走ったまま体を反時計回りに回転し、一塁送球してアウト。3点を先制した直後、相手に流れが傾きかけたところだったが、鉄壁の守りで食い止めた。

 13年から5年連続でゴールデン・グラブ賞を受賞している広島・菊池は、中京学院大の5学年先輩にあたる。大学時代は、菊池の動画をむさぼるように見て研究した。現役時代に7度のゴールデン・グラブ賞に輝いた井端内野守備走塁コーチからは「守備範囲とスピードは一級品。菊池クラスの選手になれる」と認められつつも、「今の菊池との決定的な違いは球際の強さ。そこが足りない。年を取って守備範囲は落ちても、グラブさばきは衰えない」と厳しく戒められてきた。3回には、難しいバウンドの打球をさばいて二ゴロ併殺を完成。あこがれの領域へ、一歩ずつ近づいている。

 バットでも貢献した。初回無死一塁では2球で追い込まれながらも、5球ファウルで粘り、最後は10球目を左前へ打ち返した。「粘って打てたと思います」。4回先頭では右前安打でチャンスメイクし、ここから後続がつながって3点を奪った。2安打2盗塁した20日の初戦に続き、今季7度目のマルチ安打とした。

 名誉挽回への思いもあったはずだ。17日のDeNA戦(新潟)では、2打席連続でバントを決められず。チームは接戦を制したが、試合後のベンチ裏では村田ヘッドコーチら首脳陣から厳しい言葉で叱責(しっせき)された。ポテンシャルが高いからこそのゲキだったが、翌18日は帰京だけの休養日を返上し、その足でG球場へ向かった。室内練習場でバント練習やマシン打撃など、ひとり黙々と汗を流した。

 連勝は3月31日の阪神戦~今月3日の中日戦で3連勝して以来で、カード勝ち越しは5カードぶりだ。高橋監督は「ピンチでね、こちらも『抜けたかな』というところ、よく追いついてくれた。持ち味というか、守備範囲の広さというか。本当にナイスプレー」と吉川尚を絶賛した。試合中は坂本勇や井端コーチから守備位置の助言をもらっているといい、「それで捕れている部分もあると思います」と感謝するが、吉川尚のグラブでつかんだ勝利とも言えるだろう。(尾形 圭亮)

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