【巨人】阿部「やっと打てたなあ…」初安打 チームは7連勝

スポーツ報知
7回2死二、三塁、亀井の勝ち越し打で生還した二塁走者の阿部は、ナインと笑顔でタッチを交わす(カメラ・矢口 亨)

◆巨人11―8ヤクルト(29日・東京ドーム)

 巨人が一時は4点のリードを許しながら、ヤクルトに大逆転勝ち。連勝を7に伸ばし、3・4月度の勝ち越しを決めた。ハイライトは5―7の7回1死満塁だ。今季無安打だった阿部が代打で一、二塁間を破る同点2点打。代打・亀井も2点二塁打で続き、この回打者一巡で6点を奪った。坂本勇、ゲレーロ、マギーには一発が飛び出し、両軍合計24安打19得点の打ち合いを見事に制した。

 安堵(あんど)の笑みと一緒に、思わず言葉がもれた。阿部が両腕を突き上げる。「やっと打てたなあ…」。開幕から24戦。自身11打席目で、ようやく「H」ランプが光った。

 最高の見せ場だった。2点を追う7回1死満塁、押せ押せムードの中で「代打・阿部」がコールされた。東京Dは逆転したかのような雰囲気に包まれ、これにきっちり応えた。1ストライクからの2球目。初球とほぼ同じコースに来た近藤のフォークを右前へ運んだ。「昨日から8、9球、フォークしか来てなかったので。何とか当たりました」

 この一打で追いつくと、亀井が決勝の2点打。打者12人で6点を奪い、豪快に試合をひっくり返した。4点差以上を逆転した試合は昨年は1度しかなかったが、今季は早くも2度目。2年ぶりの7連勝で、一時は借金5にまで達した3・4月度の勝ち越しを決めた。

 プロ18年目、39歳の阿部は今季、岡本の台頭もあって、代打の切り札としてベンチで待機。試合途中から体を準備したり、集中力を高めたりする難しさは想像以上だった。展開次第では、出番がないまま球場を後にすることもある。「自分の調子がいいのか悪いのか、それを把握するのも簡単じゃない」。押し出し四球を選んだ試合もあったが、開幕からここまでヒットはゼロだった。

 気持ちが折れそうになる時、大先輩からの言葉を思い出す。「まだまだやれる。息の長い選手にならないとダメだぞ」―。3月にソフトバンクとのオープン戦で福岡遠征した際、王貞治氏からそう激励された。現役最終年に30本塁打を記録した世界のホームラン王。「王さんのように、余力を残しながらもスパッと身を引くのは格好いいと思う」と憧れていただけに、ある意味で真逆の助言は胸に響いた。

 息長く、勝負の世界に食らいついていくために、やるべきことは明確だった。ホームゲームや関東近郊での試合前だけでなく、遠征の移動日も朝から東京Dの室内練習場に籠もり、新幹線の出発時間ギリギリまでバットを振り続けた。ヤクルトや侍ジャパンの名参謀として活躍し、今年から巨人に加入した志田スコアラーを「敵からしたら、俺のことはどうやって打ち取ろうとする?」など質問攻めし、改めて弱点を洗い出した。

 お立ち台ではお決まりの「最高でーす!」を絶叫してファンを喜ばせ「代打のとき、すごく大きな声援を本当にありがとうございます。チームが勝てる、追いつく一打を一本でも多く打ちたいと思います」と約束。1か月遅れで“開幕”した阿部の頭の中は、次の勝負へ切り替わっていた。(尾形 圭亮)

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