【巨人】36歳内海、306日ぶり白星 2軍での苦悩晴れ「もっと勝ちたい」

スポーツ報知
今季初白星の内海は試合終了後、カミネロとハグ(カメラ・酒井 悠一)

◆巨人4―2阪神(10日・東京ドーム)

 巨人は今季初登板となった先発・内海が昨年7月8日の阪神戦(甲子園)以来306日ぶりの1勝を挙げた。6回途中を4安打2失点で入団2年目の2005年から14年連続の白星。3回にはかつての女房役・39歳の阿部が自身2試合連発となる右越え先制3ランを放ち、36歳左腕を援護した。救援陣も7回から上原、沢村、カミネロの「USA」が無失点リレー。ベテランの活躍で2連勝となった巨人は、2位に浮上した。

 苦悩が報われ、最高の笑顔が広がった。内海は様々な人の思いが詰まったウィニングボールを大事そうに握りしめた。3ランの阿部とお立ち台に登壇。目を潤ませながら喜びに浸った。

 「久しぶり過ぎてすごく緊張した。この舞台に帰りたいという強い思いでやってきたので良かったです」

 9か月ぶりの1軍。野球人生をかけるとも言える試合。開始前は「おしっこが近かった」とガチガチだった。だが、初回のマウンドに上がると一変。「立った瞬間の景色が気持ち良かった。いい緊張になった」。1番江越を3球三振。勢いに乗った。130キロ台後半の直球は球威があり、緩急を駆使して5回まで2安打無失点。6回途中の降板、2失点を反省したが、魂の85球に大拍手が送られた。

 先日、神奈川・箱根の温泉で家族サービスとリフレッシュをした。道中、箱根駅伝(報知新聞社後援)の観戦名所で、中継ポイントでもある「小涌園前」を通過。「テレビに出てくるところを通った。ちょっと感動した」と心が震えた。これまで「山の神」など数々のドラマを生んだ、往路5区の山登り。学生ランナーの汗と涙がつまった山道にパワーをもらった。

 オフに肺の縦隔(じゅうかく)腫瘍摘出手術を受けて臨んだ昨年は2勝7敗。「もう一花咲かせたい」と完全復活を目指す今年の歩みは、駅伝の山登りと重なる。頂点は一足跳びに届かない。「ファームでしっかり結果を残さないと」と一歩ずつ前に進んできた。

 長年、生え抜きエースとして良い時も苦しい時も巨人を支えてきた。内海自身、過去の栄光に浸るつもりなど全くないが、周囲が「2軍選手」と受け入れるのは簡単ではなかったようだ。

 内海「去年は『内海が2軍に落ちてきた』というところで若い選手がすごく気をつかってくれているな、と感じた。僕も(自分がいるせいで)『やりづらくしてないかな』と思っていた。ずっと2軍にいたからか、今年はそういうのがなくなった。(若手にとって)身近な存在になっていると思う。自分のことだけに集中してやらせてもらった」

 他を圧倒する練習量で実績を重ねてきた。その姿勢は年齢を重ね、立場が変わっても不変。2軍では後輩より早い朝7時前から球場でトレーニングした。

 「若い選手にはまだ勝てるなと思っています。それは成績とか能力とかではなく、取り組みとか。教えはしないけど、見てほしいなと思ってやってきた」

 ファームでは昨秋から継続して小谷2軍投手コーチの指導を受け、5登板で1勝1敗、防御率1・57。「1軍はすごく遠い場所だなと思っていた」と心が折れそうな時も前を向き、誰もが認める結果で昇格切符をつかんだ。

 この日のスタンドでは、聡子夫人と4人の子どもが観戦。帽子の裏にはマジックで「S E O K S」と家族のイニシャルがあった。長男・瑛太くん(小5)は少年野球で白球を追う。支えてくれた家族の思いを背負い、「1軍で投げている姿を見せられて良かった」と父親の顔を見せた。

 由伸監督は「粘り強く、いい投球だった。前半は真っすぐで押せていた」とたたえた。内海、阿部、上原とベテランの活躍で2位浮上。ムードは最高潮だ。

 306日ぶりの白星で、球団では斎藤雅樹らに並ぶ14年連続白星。「ファームでやってきた思いが晴れた。もっと勝ちたい、という欲が出てきた。1軍の選手としてまだまだやっていきたい」と力強く話した。長く険しい野球人生という山登り。36歳。立ち止まるには早すぎる。逆襲に燃える内海の挑戦は道半ばだ。(片岡 優帆)

 ◆内海の306日ぶり白星までの歩み 昨年は開幕ローテ入りも2勝7敗。7月8日の阪神戦(甲子園)での勝利を最後に4登板勝ちがつかず、8月下旬に2軍落ち。シーズン終了まで昇格の声はかからず、G球場の秋季練習で若手と練習。今年2月のキャンプは新人時代の04年以来14年ぶりの2軍スタート。体調面の問題はなかったが、競争の結果、開幕1軍を逃した。

巨人

×