【巨人】吉川尚「一生忘れられない」松坂撃ちプロ1号 テレビ観戦の母に届けた“プレゼント”

スポーツ報知
1回無死一塁、吉川尚が右越えにプロ1号となる先制2ランを放つ(投手・松坂=カメラ・橋口 真)

◆巨人9―5中日(13日・東京ドーム)

 巨人の吉川尚がプロ初アーチを中日・松坂から放った。初回無死一塁、先制2ランを右翼席の上段へ豪快に打ち込んだ。4回には岡本が、2番手の笠原から、初の逆方向へのアーチとなる6号3ランでダメ押しした。巨人は2カード連続の勝ち越し。首位・広島とのゲーム差を「3・5」に縮めた。中日移籍後、初のビジター登板となった松坂は、右ふくらはぎの強い張りを訴え、3回途中で降板した。

 打った瞬間、吉川尚はスタンドインを確信した。大歓声の中、打球は右翼席上段に吸い込まれた。初回、初球を左前安打した坂本勇を一塁に置いて、松坂の2球目、内角低めカットボールをバットに乗せた。プロ初本塁打となる1号先制2ラン。初のお立ち台では「一生忘れられないと思います」と声を張り上げた。

 平成の怪物とはプロ2度目の対戦。4月5日の敵地での初対戦では二塁打をマークし、この日も平常心で打席に立った。松坂が98年に横浜高で甲子園春夏連覇を達成した時はまだ3歳だったこともあり、印象を聞かれると「メジャーで投げている時のイメージが強い」と振り返る。

 偉大な投手から放った初アーチの味は格別だった。「一生ないことなので、うれしく思います」。松坂がマウンドに上がった時には球場全体から拍手が湧き起こる独特な雰囲気だったが、2年目の若武者の一振りでスタンドの空気を変えた。由伸監督も「松坂という偉大な投手から打ったのは、1号としてはうれしいんじゃないかな」とたたえた。

 岐阜の実家で見守る家族へ最高のプレゼントとなった。この日は「母の日」。今まで特別な贈り物を届けたことはなかったが、スタンドから戻ってきた記念球を「両親にあげたいと思います」。これには岐阜県内の実家でテレビ観戦していた母・陽子さん(53)も「最高のプレゼントになりました。感動しました」と目を細めた。

 中京学院大では4年間一人暮らしだったため、仕送りを両親からもらってサポートを受けた。在学時に「大学4年間でどれくらいお金がかかった? 必ず返すから」と話し、実際にプロ入りが決まると「契約金は好きに使ってください」と託したという。試合後も「野球をここまでやらせてもらったのでこの舞台に来ることができた。両親、兄2人と家族にはすごく感謝しています」。さまざまな思いが記念の一本に詰まっていた。

 4月25日の中日戦(前橋)ではチームが63年ぶりに20得点を挙げたが、スタメン野手では唯一の無安打に終わり「技術不足です」と悔しい思いも味わった。この日は尚輝の一発から大量9得点が生まれた。それでも次に向けて「ホームランを打つような打者ではないですし、何とか塁に出て嫌がられることが僕の仕事」と自らに言い聞かせた。長年チームの課題だった正二塁手の座に、今年は成長を続ける背番号0の姿がある。(後藤 亮太)

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