原さん「智之は技術より気持ちで打った」特別観戦記

スポーツ報知
高橋監督と練習を見つめる原辰徳氏(右)

 巨人前監督の原辰徳氏(59)が、スポーツ報知に特別観戦記を寄せた。5回にプロ初本塁打を放ち、勝利投手になった菅野には感謝の気持ちを忘れないことを求めた。さらにベンチの采配にも積極性と覚悟を持つ重要性を説いた。(構成・高田健介)

 智之は、決して褒められる投球ではなかった。ここ数試合に比べて逆球も多く、制球できていなかった。ただ、「勝ちたい」という思いは年々、増していると思うし、その表情からも強く感じ取ることができた。

 技術うんぬんではなく、5回の初本塁打は、気持ちで打ったものだろう。幼少の頃から打撃も悪い選手ではなかったが、プロは別だ。ただ、同点に追いつかれた直後で迎えた先頭打者として、何とかしなくてはという思いはあったはず。自身の失投で梶谷に被弾しただけに、その気持ちは強かったに違いない。

 結果的に智之のソロが決勝点になったが、謙虚な気持ちで仲間への感謝を忘れてはいけない。3回、筒香に打たれた2ランも、内角を狙った直球がやや外寄りに流れた失投だった。それを直後、坂本勇が3ランで救ってくれた。1点リードの6回も、2死満塁から阿部がしぶとく2点打を打ってリードを広げてくれた。チームメートに助けられてつけてもらった勝ち星に感謝し、次への力に変えられる投手になってほしい。

 助けた、という点では3、6回の攻撃はベンチも助けられたはずだ。3回は2点ビハインドだったが、無死一塁で小林にバントさせた。まだ若いイニングで相手に簡単にアウトを与えるサインは消極的に映った。6回は1死満塁で、その小林を打たせて空振り三振だった。

 3回は智之がヒットで坂本が3ラン。6回も小林の後、代打・阿部が2点打。「点が入ったからいい」というものではない。3回は打たせても良かったし、6回は小林のところで代打・阿部でも良かった。1死満塁なら阿部も「最低外野フライ」という打席での余裕ができるし、そこで追加点が取れれば、「智之続投」の選択肢も生まれる。

 ベンチは選手への負担を軽減させ「ダメなら俺たちが責任を取る」という覚悟を持ってタクトを振らなくはいけない。今日は難しい局面を乗り越えるだけの力を選手たちが見せてくれた。チーム力は確実に上がり、「勝つ」という意識をこれまで以上に感じられるようになった。それぞれが補い、助け合う気持ちをより強く持って、戦ってほしい。(巨人軍前監督)

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