【巨人】由伸監督「もう一度意地見せよう」CS開幕へ激白

スポーツ報知
意気込みを語る高橋監督(カメラ・池内 雅彦)

 有終の美を飾る―。今季限りでの退任を表明した巨人・高橋由伸監督(43)が12日、最後の戦いに向け、スポーツ報知に思いを激白した。ヤクルトとのクライマックスシリーズ(CS)第1ステージ(S)開幕を13日に控え、“下克上”のキーマンに岡本や田中俊らの“新しい力”を指名。その上で「選手たちがもう一度、意地を見せてくれる」と期待した。ナインへの思いや決戦にかける意気込み、胸中を語った。(取材、構成・水井基博)

 慣れ親しんだジャイアンツ球場に、しばしの別れを告げた。由伸監督は普段と変わらず、打撃ケージの後ろでナインの動きを見守った。13日からは最後の真剣勝負が始まる。だが、気負いはなかった。練習後、率直な心境を口にした。

 「あっても3試合の短期決戦。初戦は重要だがそれがすべてではない。勝って次に進みたい」

 リーグ優勝を逃した責任から、すでに今季限りでの辞任を表明している。負ければユニホームを脱がなくてはいけない。選手生活18年、監督就任3年。一戦一戦が特別なものになる。

 「まあ、どうなんだろうな。選手の晩年は常に『今日が選手として最後になるかもしれない』と思ってやっていた。監督になっても常に目の前の試合を勝つために、とやってきた。だから、そう思うと特別ではないのかもしれない。『これが最後』というのは俺の個人的な話だから」

 今、頭の中にあるのは目の前の試合に勝つこと。時に各部門のコーチと会話しては、来たるヤクルト戦のオーダーを模索していた。

 「今はCSでの戦い方を考えているところ。みんなが最後のひと踏ん張り、頑張ってくれて、結果的に3位になれた。最後は自分たちが勝てば出られるというところで地力を出してくれたから今がある。日本一になれるチャンス、可能性がある限りは全力を尽くさなくちゃいけない。みんながもう一度、意地を見せてくれるよ」

 指揮官の辞任の意向が伝わったのが3日。当時チームは4位で自力でのCS進出の可能性はなかった。しかし、3位・DeNAがそこから連敗。その頃だった。ナインは口々に「監督と1日でも長くやりたい」と言うようになった。その後の2戦に連勝。選手の真っすぐな思いは耳に届いていた。

 「まあ、俺は直接聞いているわけじゃないけどね(笑い)。だけどね、そういう思いはありがたいし、本当に思ってくれているならうれしいよ。みんなの気持ちが目の前の試合に勝つという方向に、さらに強く向いてくれる要因であれば、なおもうれしいね」

 今、チームは一枚岩にある。気持ちだけではなく、9日の試合では失点しても取り返す、本来の強さが戻っていた。レギュラーシーズンを67勝71敗5分けで終えたが、状態は上がっている。勝率5割以下のチームが日本一になれば史上初だ。

 「有利か不利で言ったら消耗していく分、不利かもしれない。ただ自分が選手だった時は、1位でいった方がプレッシャーはあった。負ければ1年間やってきたことがなくなる感じがするからね」

 指揮官はキーマンを挙げた。岡本、そして田中俊だ。就任してから目指してきたのは、新しい力を生むこと。大城も頼もしさを増している。チームは変わりつつある。その手応えは確かにある。

 「選手の時もそうだし、監督になってからもそう。新しい力が欲しいと思っていたし、何とかしたいという思いで3年間やってきた。彼らが新しい力になるんではないか、というところまでは来ている。3年の時間はかかったけど、選手が少しでも出てきてくれた」

 目の前ではちょうど、若手選手が打撃練習を行っていた。見渡しながら、こう強調した。

 「そういった新しい力が試合で力を出してくれると、チームは変わってくる。よりいい方向に変わってくるはずだよ」

 まずは、ヤクルトに勝つ。ここに集中する。相手の先発は小川。16年シーズンから8連敗中の天敵だ。

 「やられっぱなしじゃダメだよな。こちらは下からはい上がってきたんだから、全力でぶつかっていこうと思う。神宮は乱打戦になるイメージがある。打たれないことが一番だが、1点でも多く取りたい。とにかく、ぶつかっていくだけ。いい結果を残したいね」

 初戦の先発を今村に託す。菅野、メルセデスと並ぶ3本柱に成長した左腕だから、期待は大きい。一方で、本来ならエース・菅野でスタートしたかったのは本音だろう。だが、9日の阪神戦(甲子園)で9回に“守護神”として登板させ、CS切符を勝ちとった。あれから初戦までは中3日。体力面を考慮した苦渋の決断だった。実際、5点のリードがあった。CS初戦での先発を目指すために温存しても良かったのではないか―。指揮官は首を横に振った。

 「最後は勝っていれば菅野でと思っていた。意見はいろいろあると思う。でも、じゃあ何点差だったらいいんだということになる。これを勝たなかったら次に進めない状況なわけだし、しかもベンチに入れていた。本人に『勝っていたら行く』と言ったわけだから、菅野以外の選択肢はないよ」

 絶対的なエースとして、就任当時から絶大な信頼を誇った。常に期待通りだから、思いはさらに強まった。そんな由伸監督に一つの夢ができた。日本シリーズに進出し、優勝が決まる最終回は菅野をマウンドに送りたい。

 「その時にどういう状況にあるかもあるけど、ただそうありたいね」

 インタビューの最後に指揮官は自ら口を開いた。それは長年応援してくれた巨人ファンへ向けたものだ。

 「この1年、期待された結果ではなかったかもしれないけど、何とか選手たちが意地を見せて、ここに残れた。もうひと踏ん張りしたい。選手が意地を見せてくれると思う。そこはぜひ、ファンの皆さんに応援してもらえたらなと思う」

 ◆9日阪神戦(甲子園)VTR 勝てばCS進出が決まる最終戦。巨人は1点を追う3回に阿部の2点二塁打で逆転し、5回には陽の2点三塁打で加点。6回に追いつかれたものの、7回に岡本が勝ち越しソロ。8回にも33号2ランを放って史上最年少で「3割、30本、100打点」を達成すると、リリーフ待機していた菅野が9回を3人で抑え9―4で勝った。

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