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愛息にもインコース攻め!?巨人・阿部が背中で示す野球への強い思い

2018年1月2日16時0分  スポーツ報知
  • 昨年11月、沖縄・伊江村での自主トレで笑顔を見せる阿部慎之助

 巨人・阿部慎之助(38)の最近の楽しみは5歳の長男・成真(せいま)くんに野球を教えることなのだという。

 自らが打撃投手として軟式球、場合によっては硬式球を投げ込むが、気持ちよく打たせるばかりが「阿部コーチ」の指導法ではない。時折、不意を突いて厳しくインコースを攻める。ボールをよけ損なった成真くんに、ぶつけてしまうこともある。それでも「痛いことや怖いことを超えて、野球が面白いと思う気持ちを強く持って欲しい」と阿部は言う。NPBの左打者で歴代最多となる「146」の死球を受けながら、2000安打を達成した強打者の厳しくも優しい教え。その思いに応えるように、成真くんは涙をこらえながらバットを振り続ける。

 「一切嫌がったりしないんだよ」。愛息の頼もしさに、強面の阿部も一瞬、表情を崩した。

 昨季に名球会入りを果たし、タイトルと名声を手にしてきた巨人史上最強捕手も3月で39歳になる。2015年から本格的に一塁手への転向を余儀なくされた体は、あちこちで悲鳴を上げている。世代交代が迫られているチームで、最年長の自分が試合に出続けることは、成績に対する周囲の厳しい視線にさらされることでもある。

 それでも、背番号10が現役を続ける理由は野球が好きだという気持ちの強さに他ならないだろう。痛くても苦しくても、やっぱり野球が面白い。だからグラウンドに立つ。愛息への教えは、現在の阿部の姿とどこか重なって見える。成真くんが父の厳しい愛情をしっかり感じ取っているのは必然だと思った。

 昨年のオフ、沖縄・伊江村、ジャイアンツ球場などで何度か阿部の自主トレを撮影する機会に恵まれた。しっかりと練習を見るのは約2年ぶりになる。ファインダー越しの阿部は、打撃マシンを相手にとても丁寧に練習をしていた。胸元までグリップを落とす新フォームはDeNA・宮崎敏郎(29)や広島・丸佳浩(28)を参考にしたものだという。

 そして時折、バットを短く持って逆方向に打球を飛ばす。際どいボールを見極めるような仕草も見せる。この人はきっと、4番にも、皆が持つ「阿部慎之助」のイメージにもこだわっていない。年下の選手の打撃を研究し、チームバッティングの練習を繰り返すその姿から感じたのは、勝ちたいという強い思い。そして、大好きな野球を少しでも長く続けたいという切なる願いだ。

 巨人では王(868本)、長嶋(444本)しか達成したことのない、通算400号本塁打まで12本と迫るスラッガー。以前にカメラマンとして私が感じた「阿部らしさ」は右にも左にも同じような手首の返しで打球を飛ばす卓越した技術だった。

 でも、そのときは気が付かなかったけれど、愛息に背中で示す野球への強い思いも、大切な「阿部らしさ」。それが勝利につながった時、若い選手に伝わった時、本当の意味でチームは変わっていくのだと思う。

 プロ野球が開幕する「球春」まで約3か月に迫った2018年の新春。低迷するジャイアンツに望まれるのは、安直な世代交代ではない。(記者コラム・矢口 亨)

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