キタサンブラック、有馬Vで有終7冠 サブちゃん涙の「まつり」

スポーツ報知
引退レースで有終の美を飾ったキタサンブラック。出迎えた馬主の北島三郎は顔をそっとなでてねぎらった(カメラ・竜田 卓)

◆第62回有馬記念・G1(24日、中山・芝2500メートル)

 中央競馬の総決算、第62回有馬記念・G1は24日、中山競馬場で行われた。歌手・北島三郎オーナー(81)のキタサンブラックが引退レースで優勝。ディープインパクトなどに並ぶ歴代最多のJRA・G1レース7勝目を挙げ、有終の美を飾った。レース後のお別れセレモニーでは競馬場で1年間封印していた「まつり」を熱唱。ファンに愛された一頭のサラブレッドが最高の形で競走生活にピリオドを打った。

 「これが有馬の まつり~だ~よ~!」。サブちゃんが涙ながらに「まつり」を絶唱し、愛馬の“有終7冠”に花を添えた。

 レースから1時間半が経過しても5万人が待ち構えていたお別れセレモニー。厳しい寒さの中、コートを脱ぎ捨てて登場した北島を拍手と歓声が包む。スタンドの「まつり」コールに「大きな声で合体して歌いましょう」と応えての大合唱がフィナーレだ。

 2着に終わった昨年の有馬記念以来、1年間封印した「まつり」。G1初勝利した15年の菊花賞から6回目の競馬場での熱唱は、武豊騎手(48)もサビで小声で歌い、初めて“参加”。これに先だって、「子供と別れるつらさを書いた」と自身作詞の新曲「ありがとう キタサンブラック」を収めた映像がお披露目された。

 デビューから3年足らずで迎えた3度目の有馬記念。一昨年3着、昨年2着に終わった愛馬はスタートから後続馬に一度も先頭を譲ることなく、史上最多タイのJRA・G1レース7勝目のゴールを駆け抜けた。その瞬間、サブちゃんはイスに座りながら数秒間、放心状態に。「3コーナーあたりから涙がポロポロでした。一生のうちにこんな感動する日が81歳になって(来るとは)と、感じました」。馬場へ下りると、ブラックの鼻を左手で4度なでて、最後の激走をたたえた。

 「やたら脚が長い馬だ」。5年前、北海道・日高町のヤナガワ牧場で初対面の印象は決してよくなかった。だが、牧場から空港に向かう車中で「愛らしくていい目をしてる」とその子馬の顔が浮かび、すぐに牧場に連絡。所有することを決めた。「筋肉もついて、顔も二枚目。石原裕次郎さんみたい」。大きなけがもなく、誰もが知る名馬に大成した。

 本業の演歌歌手で13年にNHK紅白歌合戦を卒業。15年1月30日には劇場座長公演を退いた。翌31日のブラックの東京競馬場でのデビュー戦に足を運び、見事に勝利。自身からバトンを引き継ぐように競走馬人生が始まったのは何かの縁だ。16年秋に頸椎(けいつい)症性脊髄症の手術後のジャパンCで快勝し、激走に励まされた。

 55年目の馬主人生で200頭以上を誇る所有馬で最強で最愛の一頭。今後は種牡馬として第2の馬生が始まる。「終わりと同時に始まり。ブラックの子たちがターフの上を走る姿を見たい」。順調にいけば、産駒のデビューは21年。北島オーナーは次なる夢に思いをはせた。(星野 浩司)

競馬

×