G1・24勝の角居調教師、天理教の仕事継ぐため2021年2月で勇退

スポーツ報知
07年に64年ぶりの牝馬による日本ダービー制覇をウオッカで成し遂げた角居調教師(左から2人目)

 ウオッカやヴィクトワールピサなど数多くの名馬を育てた角居勝彦調教師(53)=栗東=が、2021年2月末に調教師免許を返上して、勇退することが6日までに分かった。故郷の石川県内で祖母の代から続く天理教の仕事を継ぐため。01年の開業からJRA通算660勝、G1・24勝を誇る名門厩舎は、過去に例のない形で3年後に解散する。

 数々の歴史的名馬を育て、国内外の大レースを制してきたトップトレーナーが競馬界を去る決意を固めた。栗東トレセンで取材に応じた角居調教師は「21年2月で解散ということになります」と明言。昨年に母親が体調を崩して、教会に通えなくなったため、自らが天理教の仕事を継ぐことを決めた。「馬も、馬主さんも、従業員もいて、好きな仕事でもあるので」。悩んだ末に出した結論だったことを明かした。

 今後の影響に配慮し、厩舎スタッフには昨年10月に報告。オーナーサイドには「今月から徐々に伝えています」という。引退時期が3年後となるのは「昨年生まれた子を預かる話は決まっていたので、その子たちがクラシックを走り終えるまでは責任を持ってやる、ということです」と説明。また、トレセンを離れた後は「競馬にはかかわらないと思います」と語った。

 華やかな舞台で実績を残す一方、現役生活を終えた競走馬や、障がい者乗馬を支援する活動にも尽力している。これに関しては「都合がつけば(参加できる可能性も出てくる)とは思いますが、まだどうなるか、分からないので」と話すにとどめた。

 「世界に通用する馬づくりをテーマにしてきました。その努力はまだできます。残された時間で精いっぱいやっていきたいです」と角居師。残り3年余りとなった調教師生活も、トップランナーとして、駆け抜ける覚悟を示した。

<樹理が見た> 角居調教師勇退の報を聞き、非常にショックだった。競馬だけでなく、馬そのものへの愛情が深い人だからだ。3年前、“角居師にとって馬とは?”という質問をした。その答えがこうだった。「無限の可能性を秘めている動物。まだ耳あかくらいも分かってないんじゃないかな。ウエスタンの技術だったり、ポニーショーを見ても感動する。そういう無限の可能性を知りたいですよね」

 一般ファンに混じって北海道・ノーザンホースパークのポニーショーを楽しんだり、柵の中に放たれているポニーと柵の外から戯れたり。近年は引退競走馬のセカンドキャリア構築にも心血を注ぎ、純粋に馬が好きなのが伝わってくる。

 それだけに競馬界にとって失うものが大きいが、勇退後もホースセラピーネットなどを運営する一般財団法人のホースコミュニティの代表理事は務めるという。「収入はなくなりますが、お金が続く限りはやっていこうと思います。また競馬の世界とつながることもあるかもしれませんね」。その言葉を聞いて安心した。やはり角居師にはいつまでも馬とつながっていてほしい。(橋本 樹理)

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