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ラニと「濃い時間」過ごした松永幹調教師の忘れられない光景

2017年11月15日14時19分  スポーツ報知
  • ケンタッキーダービーで大観衆を前に馬場入りするラニ(鞍上は武豊騎手)

 10月26日付で、ラニの現役引退が発表された。通算17戦3勝。国内では2歳未勝利と500万特別(カトレア賞)を勝っただけだったが、海外では3歳の2016年3月にドバイのUAEダービー・G2を制覇。日本調教馬として初めて米クラシック3冠に出走した。異国の地で輝いた馬だった。

 「本当に濃い時間でしたね。貴重な経験をさせてもらいました」。そう振り返った松永幹調教師にとって、忘れられない光景があった。米クラシック3冠の初戦、アメリカ競馬の祭典「ケンタッキーダービー」だった。

 前のレースが終わると、厩舎地区がある向こう正面から馬場に入り、外ラチ沿いを通って、出走馬の後ろを歩いてパドックまで向かった。馬場から見る16万人以上のファンが詰めかけたスタンドは壮大で圧巻だった。「今まで馬と一緒に馬場を歩いて(パドックへ)行くなんて経験はなかった。本当にお客さんたちが華やか。また、行きたい。挑戦したいですね」。9着に終わったが、夢のような光景は、今でも脳裏に焼き付いている。

 ラニは現地のマスコミから「ゴジラ」と名付けられた。調教で他馬を威嚇したり、襲いかかろうとする姿が、映画の「GODZILLA」と似ていたからだ。その強烈な個性は世界の名手をひきつけた。カトレア賞を勝った後、検量室前で表彰式を待つラニを見つめていたのが、このレースで他馬に乗っていたライアン・ムーア騎手(34)=英国=だった。松永幹師は「『すごくいい馬だ』と言ってたようで、UAEダービーの時もスタンドから調教を見てくれていたらしいんです」と明かした。

 今年3月のドバイ遠征で、ムーアはラニに騎乗した。初戦のアルマクトゥームチャレンジ・ラウンド3で6着に敗れた後も、ドバイ・ワールドカップ・G1に「乗りたい」と志願したという。「本番で結果は出なかった(8着)が、すごく興奮しながら『この馬の勝ち方が分かった!』って引き揚げてきた。何か感じるものがあったんじゃないかな」と振り返った。

 ムーアが再コンビを熱望していたが、ラニは2年1か月半で競走生活を終えた。「一番弱い年のUAEダービーで勝った」と揶揄(やゆ)する声を見返そうと調整を続けてきた。調教で動くようになったが、精神面が以前にも増して「わがまま」になった。「今が種馬(種牡馬)にするのに、いいタイミングなんじゃないかな」と松永幹師。長い葛藤の末の決断だった。

 ラニの取材をしていると、同じ芦毛のゴールドシップと姿が重なった。G1で6勝を挙げたゴールドシップに対し、ラニは国内で重賞すら勝っていない。ただ、日本競馬では未知の領域だった米クラシック路線を完走した功績は大きい。記録より、記憶に残る馬だった。(記者コラム 山本 武志)

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