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寝てる時以外は24時間サッカーのことを考えている…神戸・吉田監督代行の「ヴィッセル愛」

2017年12月27日16時0分  スポーツ報知
  • リーグ戦終了のあいさつをする神戸・吉田孝行監督代行(後ろは三木谷会長)

 サッカーJ1の神戸は、23日の天皇杯準決勝・C大阪戦(ヤンマー)で延長戦の末に1―3で敗れた。今大会でクラブ初タイトルを獲得する可能性があったため、19日に吉田孝行監督代行(40)の合同取材が行われた。残念ながら紙面に掲載することができなかったため、当コラムで紹介したい。

 指揮官からは随所に「神戸愛」が感じられた。「外部から(選手を)取って強くする短期的なプランもいいけど、育成から生え抜きを育て、生え抜きから(日本)代表選手を育てて、海外に行って、活躍して(神戸に)帰ってくるのがクラブの理想だと思う。そういうサイクルをつくることで『ヴィッセルに行けば海外に行ける』と、いい選手が集まってくると思う。いいサイクルをつくるには、アカデミーからトップまでが同じ絵を描く。人がコロコロ変わるとガラっと変わってしまうので、クラブとしてのビジョンを持っていかないといけないと思う」と力説した。

 神戸は8月16日にネルシーニョ前監督との契約を解除し、吉田監督代行が初めてJクラブの指揮を執った。「不安は正直、すごくあった。自分がやらなかったら『じゃあ、誰がやるんだろう』と考えたときに、自分が一番チームで長くて、選手のことも知っていて、自分が逃げ出すわけにはいかないと思った」と、火中の栗を拾った。

 ネルシーニョ前監督からは退任時に「自分がいいと思ったことをどんどん取り入れて、自分流をつくればいい」と助言された。「自分の武器があるとしたら、現役の目線にすごく近いこと」。選手と年齢があまり離れていないため、個別に呼んで積極的にコミュニケーションを取った。

 元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキ(32)とも議論を重ね、FWから中盤に下がる自由を与えた。「話してみると、本当にまともな考えを持っている。2トップからちょっと下がって、そこからもう一回、出て行くイメージでやってみようと話をしたときに『俺もそれがいいと思う』と本人も言っていた。やったら意外とフィットした」と、2014年ブラジルW杯優勝メンバーを生かすすべを見つけた。

 現役時代から20人以上の監督に師事し、特にヘッドコーチとして仕えたネルシーニョ前監督と、大分時代に指導を受けたシャムスカ監督が印象に残っているという。「ネルシーニョさんは勝つために、次の試合に向けてのオーガナイズや分析で本当に妥協をしない。情熱や選手交代、試合の流れの見方やマネジメントなど、いろいろ学ばせてもらった。シャムスカさんはモチベーター。彼がかける言葉は選手にやる気を持たせてくれた」

 兵庫・滝川二高出身の吉田監督代行は、2008~13年まで神戸でプレーした。クラブのアンバサダーなどを務め、15年に開催された「阪神・淡路大震災20年 1・17チャリティーマッチ」は「風化させてはいけないという思いが強かった」と、発起人として尽力した。

 1995年1月17日は、サッカーJ1の神戸が初練習を予定していた日だ。兵庫・滝川二高3年時に被災した指揮官は「1・17」を「ヴィッセル神戸の歴史の中で忘れてはいけない日」と表現した。来月で阪神・淡路大震災の発生から23年がたち、その後に生まれた選手も増えてきた。「クラブに対しては(震災の記憶が薄れつつあると)感じる。昔は1月17日のスタート(練習の始動)でやっていた。震災の映像を見て、こういう(甚大な被害を受けた)クラブだということをチーム全員が理解した上で、忘れずに一生懸命みんなで作り上げていこうとスタートしていた。最近は、そういうのが薄れてきたりしている。それはクラブとしてもう一度、思い出さないといけないと感じている」と、危機感を抱いていた。そのため「1・17」に始動するプランを温めているようだった。

 記者と同学年。神戸というプレッシャーが大きいクラブを率いる心労は並大抵ではないだろう。「24時間、寝ているとき以外はサッカーのことを考えている」といい、息抜きも「今は難しいですね」と苦笑する。ドイツ代表で最多150試合に出場し、W杯最多試合出場記録(25試合)を持つローター・マテウス氏の「監督(と選手)は別の仕事」という言葉に同感していた。

 11月18日の広島戦後に神戸の立花社長は吉田監督代行の来季続投を発表した。だが、今季初の公式戦4連敗でシーズンを終えたことで、続投の雲行きが怪しくなってきた。クラブはまだ続投を正式に発表していない。吉田監督代行のような貴重な人材を失うことになれば、神戸にとっては大きな損失だろう。

(記者コラム 伊井 亮一)

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