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斎藤学の川崎移籍に「ひとつだけ言わせてもらいたい」 電撃移籍の真相

2018年1月20日17時0分  スポーツ報知
  • 斎藤学

 1月13日、マリノスのMF斎藤学が川崎へ電撃移籍することが決まった。

 下部組織出身のキャプテン。10番。9月に負った全治8か月の大けがからリハビリの最中。さらに新天地は同じ神奈川の川崎で、移籍金はゼロ。25年目を迎えるJリーグの中でも、最大級の驚きを持って伝えられた移籍となった。

 19日、斎藤は移籍決定後、初めて自身のSNSを更新。「ひとつだけ言わせてもらいたい」と移籍に至った胸中を明かし、「何を言われてもしょうがない。そう思っていましたが、今までマリノスの選手として闘ってきたこと。これだけは否定されたくない」と書きつづった。その反響を見て、強く感じたことがある。1年間、マリノスの番記者を務めた私も「ひとつだけ言わせてもらいたい」。

 斎藤のマリノスでの第1回契約更改は12月12日に行われた。クラブの強化方針や新監督決定の遅れなどを指摘した斎藤は、神妙な表情で「(去就は)時間もないし、早々に決めないと」と報道陣に話した。一部報道ではこの言動がクラブ批判と捉えられ、恨みつらみの中で移籍を決断したと伝えられている。しかし、移籍に至ったのはクラブへの不満が原因ではない。

 サッカー界の契約更改は通常、複数回に渡って行われる。選手同席は1回目のみで、2回目以降は代理人に委ねられるケースが多い。選手はこの年に一度のオフィシャルな対話の機会に、クラブに様々な要望を伝える。現に今季、マリノスで契約を更新した選手にも、練習環境や評価方法の改善などクラブに意見を求めた選手は多くいた。斎藤はこの時点で残留の可能性があったわけで、キャプテンとしてチームに改善点を訴えるのは当然である。

 斎藤は複数のJクラブ、海外2部からの獲得打診を受けていた。斎藤の目標はロシアW杯出場だ。2014年ブラジルW杯で出番なしに終わった雪辱。昨季、日本代表のハリルホジッチ監督がマリノスの試合を視察したのは3試合だけだった。川崎はハリル監督を含め、代表スタッフが試合会場にいることがほとんど。昨季覇者のチームで、代表候補から定位置を奪う活躍を見せつければ、代表復帰も近づく。一方でマリノスに残れば、復帰後は中心選手としての活躍が約束されており、クラブへの愛着を力に変えることもできる。関係者によると、斎藤は元日の時点で残留か川崎かの二択に絞り、他のオファーに断りを入れていた。

 9月の負傷時に全治8か月の診断を受けたがリハビリは順調。腫れ等の症状が出ない限り、3~4月には復帰できる見通しだという。滑り込みでのW杯出場へ、新たな環境に飛び込む“挑戦”か。恩あるクラブで主将・10番のプレッシャーとともに戦って行く別の意味での“挑戦”か―。結果、「恩を仇で返す」(斎藤)形で、川崎移籍を決断した。

 斎藤の10番は空きとなったが、斎藤が2016年まで背負った11番はU―21代表MF遠藤渓太に渡った。斎藤と同じく下部組織出身。斎藤の手術前後には、運転ができない斎藤がリハビリに向かう際のドライバー役を務め、助手席に座るキャプテンから「死に物狂いで頑張ってくれ」と言われていた。

 森保ジャパンの一員として中国遠征中の遠藤には、斎藤から個別の連絡があったという。「学くんの代わりになることはできないので、変に意識し過ぎずに。今年のマリノスは今年のマリノス。今年のサッカーを見せていきたい」。「もうベンチに入ってOKではダメ。スタメンで出ないといけない。プレッシャーは感じますけど、番号うんぬんでプレーが変わるようではダメ」。東京五輪を目指す20歳は、中国の地で決意を語った。

 リーグ5位、天皇杯準優勝のクラブ。遠藤がやすやすとポジションを得られるほど、マリノスは簡単な競争環境ではない。25試合の出場ながらチーム1位のアシスト数を稼いだ10番の穴を、厳しいチーム内の競争で埋めていく。斎藤も同様。代表経験者が名を連ねる川崎の攻撃陣はリーグ屈指だ。負傷から復活しても、定位置はもちろん、ベンチ入りさえも確約されていない。今回の移籍がマリノスにとっても、川崎にとっても、そして斎藤にとっても最善の選択だったと思わせるような結果になることを願いたい。(記者コラム・岡島 智哉)

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