【ロシアW杯ここに注目】真価問われる「VAR」W杯初導入 遅延影響は少

スポーツ報知
昨年11月の日本対ブラジル戦で映像を確認する主審(奥)

 毎週水曜掲載のロシアW杯日替わり連載は「ここに注目」と題し、大会にまつわる旬な話題を紹介。第1回はW杯初導入されるビデオ判定システム「VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)」。

 主審が両手でテレビ画面を意味する四角を描くと、「VAR」が適用される。スタジアム内の部屋で4人が様々な角度から試合映像をチェックしており、主審にアドバイスを送る。主審が映像を見直すこともできる。また、主審の死角で暴力行為などがあれば、VAR側から主審に伝えられることもある。

 導入に尽力している国際サッカー評議会のテクニカルダイレクターで、イングランドサッカー協会審判委員長のデービッド・エルレー氏は「VARは、あくまでアシスタント。主審が最終的なジャッジを下します」と言う。適用されるケースは〈1〉ゴールに関わるプレー〈2〉PKか否か〈3〉退場のカードが提示されるプレー―の3つだけ。これまでクラブW杯など972試合で試験的に導入され、300試合で“見直し”が行われた。その85%以上で判定が変わったという。昨年11月10日、日本代表がブラジル代表に1―3で敗れた親善試合で試験導入され、VARによって日本はPKを献上した。

 VARのために試合が止まり、白熱した試合に水を差すことになるとも指摘されるが、エルレー氏はデータで反論する。VARで遅延するのは1試合平均55秒だったという。通常、FKでは同8分51秒、スローインでは同7分2秒、CKは同3分57秒。VARが進行に及ぼす影響は少ないと主張する。「最小限の介入で最大限の成果を得る」とエルレー氏。世界最高峰の大会で真価が問われる。

 ◆課題 欧州主要リーグでは、ドイツ1部リーグが来季からVARの正式導入を決定した(今季は試験導入)。1シーズンの経費は約1億円とも言われる。Jリーグの原博実副理事長は「J1、J2、J3やるにはかなりの人数、お金もいる。高校選手権は? ユースは?となる。またVARのレフェリーも育てないといけない」と指摘する。VARのトレーニングは6か月から9か月必要という。

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