【横浜M】ウーゴ・ヴィエイラ、亡き妻に捧げる決勝弾

スポーツ報知
延長後半13分、横浜Mのウーゴ・ヴィエイラ(右)が勝ち越しゴールを決める

◆天皇杯全日本サッカー選手権 ▽準決勝 横浜M2―1柏=延長=(23日・等々力陸上競技場)

 横浜Mが4大会ぶりの制覇に王手をかけた。柏を延長戦の末に2―1で下し、優勝した2013年度大会以来の決勝進出を決めた。1―1で迎えた延長後半13分、エースで今季リーグ戦チーム得点王のポルトガル人FWウーゴ・ヴィエイラ(29)が右足で押し込み、決勝点を奪った。元日の決勝(14時40分・埼玉)でC大阪と対戦する。

 これぞストライカーの仕事だ。延長後半13分、MF遠藤が右サイドを駆け上がり、FWウーゴ・ヴィエイラへラストパス。何度も好機を逸してきた点取り屋は、最後の最後で冷静に右足を振り抜いた。「感動的な瞬間だった。チーム一丸となって戦えたから勝てた」。ボールがネットに収まると、ウーゴの周りに歓喜の輪が広がった。ベンチは空っぽ。控え選手全員が殊勲のエースの元に走り寄り、抱き合い、雄たけびを上げた。

 前半11分に失点したが、今季限りで退任するエリク・モンバエルツ監督(62)は後半3分にFW伊藤を投入し2トップの布陣に変更。これが功を奏し、伊藤が同24分に頭で同点弾。シュート18本を浴びたが守備陣が最後まで踏ん張り、ラスト2分での決勝点につなげた。

 DF中沢はウーゴについて「90分のうち、1分だけ仕事をする男」と語る。パスは苦手。スピードも速くない。トラップは浮きがち。守備をサボる姿に、チームメートからの批判が集中したこともある。だが天性の得点感覚を持つストライカーは気にも留めない。天皇杯4回戦・広島戦で0―2の展開からハットトリックの大活躍で勝利に貢献するなど、いつでもゴールという最高の形でチームを勝利に導いてきた。この日で天皇杯4ゴールとし得点ランク2位に浮上。1位の筑波大FW中野誠也(4年)に1点差と迫った。

 ウーゴの左腕にはタトゥーが彫られている。ピッチに入る時も、ゴールを決めた時も、ウーゴはそのマークにキスをする。そこには、3年前にがんで亡くなった前妻・エディナさんとの結婚指輪が描かれている。いたずら好きで陽気なポルトガル人FWは、悲しみを背負いながらピッチに立っている。この日も歓喜の輪が解けた後、こっそりと口を当てた。

 決勝に向け、ウーゴは「チーム一丸となって戦うよ」と気合を入れ、中沢も「決勝だからいろいろなことが起きる。マリノスらしさを出せれば」と力を込めた。4大会ぶりの決勝の舞台は、4年ぶりのクラブタイトル獲得のチャンスでもある。悲願のタイトル獲得へ、いざ、元日決戦に挑む。(岡島 智哉)

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