子供へは選手のコーチングと同じ目線で…磐田・名波監督とヤマハ・清宮監督が対談〈2〉

スポーツ報知
名波監督(右)と清宮監督の対談は笑顔が絶えず盛り上がった

 ラグビーのトップリーグ・ヤマハ発動機の清宮克幸監督(50)とサッカーのJ1ジュビロ磐田・名波浩監督(45)が新春対談を行った。両クラブは磐田市内の同じ敷地にある大久保グラウンドで練習している。両指揮官による初の公式対談が『しずおか報知』で実現した。(構成・山田 豊)

 ―昨年、磐田にはMF中村俊輔(39)選手が加入した

 名波監督(以下名) お客さんの数が確実に増えた。一緒に練習する選手の成長も実感できたし、選手の顔に自信がみなぎった。

 清宮監督(以下清) 中村俊選手って空気を変える選手だね。部外者の俺が言うのもなんだけど。

 名 おっしゃるとおり。

 清 テレビ見ると敵が勝手に意識してる。彼に飛び込めない、近寄れない。39歳で移籍を色々なこという人もいただろうけど。

 名 だいぶ叩かれました。

 清 中村俊選手は今の磐田には必要。上位の常連になった時には中村俊選手に頼らなくても良いチームになっているはず。

 名 その通りです。練習やサッカーに取り組む真摯(しんし)な態度を生々しく伝えてくれる人がいなかった。最終節・鹿島戦(12・2、0△0)の前半27分のFKを、一番得意な距離とアングルで外して、試合後、謝っていた。もうオフなのに翌朝午前8時からボールを蹴っている。中山雅史さん(現J3沼津)でもしなかった。これが『プロ』。

 ―ヤマハ発動機に空気を変える選手は?

 清 ラグビーは体を張れるかが問われる競技。例えば、センター宮沢正利(29)。170センチ以下で明らかにトップリーグ(TL)先発の身長ではない。恐らくTLで一番小柄な選手。でも彼は体を張る。彼を使うことでヤマハの価値が上がる。

 名 技術でなくハート…。

 清 ヤマハでは『宮沢の様な選手を先発で使う』は褒め言葉。身体能力の高い選手が宮沢のまねをしている。ここが有益。

 ―2人とも父親。教育論や子育て論は?

 清 単身赴任7年目だからね(笑い)子供に会う時間が少ない中、話すことはヤマハのラグビーの選手のコーチングとほぼ同じ視線。

 名 へえ。例えば?

 清 何で打てなかった?

 名 直球勝負なんですね。

 清 例えばその後『一球目の球種は?』。答えが『覚えてない』は論外。スタートラインに立っていない。ラグビー選手も一緒。尋ねて答えられない選手は同じ失敗をする。

 名 清宮さん、選手に怒ります?

 清 個人的には監督室やハーフタイムに言うよ。

 名 それは息子さんにも?

 清 うまくいく、いかない、には必ず理由がある。アプローチする方法を選手に毎日伝えている。それを息子にもやっている。

 名 僕は選手には緻密(ちみつ)さを伝える。でも、子どもには真逆で放任。自由にやらせている。あいさつやモノを大事にしろ、くらい。長女がテニスやっているけど、競技の助言はない。

 清 小さい頃からうまくいかない時にどうすれば良いか仮説を立てさせる。すると次の道が開ける。

 名 仮説に対して助言は?

 清 アドバイスはしますよ。名波さん、お子様は?

 名 中2の娘、小6の息子、小1、4歳の娘の合計4人。俊輔は5人!

 清 サッカー選手はたくさん子どもがいるね(笑い)

 名 俺は一日中ずっとクラブハウスにいるので、全て嫁さん任せ…。感謝しています。

 清 俺も嫁さんに感謝しないと(笑い)

 ―新春の抱負を

 清 ヤマハの正月は13日の順位決定戦決勝後。まずは準決勝・サントリー戦(6日)へ向けて集中し、決勝の舞台に立ちたい。来季は短期決戦なので、いつもとは違うマネジメントになる。

 名 失点はリーグ最小の30だったので、その数字を減らすのは難しい。逆に得点力を上げ、新システムを導入する。最近使い始めたのは『休むな、休ませるな』。偶然ヤマハの練習を見かけて、『相手を休ませるな』という声が聞こえた。ラグビーに共通するかもしれない。

 清 練習からリズムとテンポを意識。それが試合中の自分たちのリズムとテンポを作り出す。

 名 強いチームは自分の頭を休ませず、相手を休ませない。新年度は最低5位、トップ5入りを目指します。

 =終わり=

 ◆名波 浩(ななみ・ひろし)1972年11月28日、静岡・藤枝市生まれ。45歳。清水商―順大を経て95年に磐田入団。その後、伊・ベネチア、磐田、C大阪などでプレーし08年引退。日本代表では98年仏W杯に出場するなど67試合出場9得点。14年9月から磐田監督。家族は妻と3女1男。

 ◆清宮 克幸(きよみや・かつゆき)1967年7月17日、大阪市生まれ。50歳。大阪・茨田高から早大。サントリーでプレー後、01年に引退。早大監督に就任し3度大学選手権制覇。06年度からサントリー監督として07年度TL優勝。11年にヤマハ発動機監督就任。14年度日本選手権制覇。家族は妻と2男。

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