【二宮寿朗の週刊文蹴】内田の鹿島復帰決め手は「帰属意識」

スポーツ報知
シャルケ04時代の16年12月、鹿島のウェアを借りてランニングしていた内田篤人

 鹿島アントラーズから海外に飛び出した選手は、いずれ古巣に戻ってくる。

 柳沢敦、鈴木隆行、小笠原満男、中田浩二…。ゆえにドイツの地で活躍してきた内田篤人が8季ぶりに鹿島に復帰することになっても、格段の驚きなどなかった。

 内田は鹿島の公式サイトで「10年にシャルケへ移籍したときから、また鹿島でプレーしたいという思いは常にあり、ドイツにいるときもずっとアントラーズを応援していました」と変わらぬ“鹿島愛”があったことを強調している。日本に戻るなら鹿島以外の選択肢はなかったと読み取れる。

 しかし、海外で実績を残した選手が日本に復帰する場合、小野伸二や中村俊輔ら元の所属先に戻ったケースはそう多くないのが実情。なぜ、内田は鹿島に舞い戻ってきたのか。その答えは「帰属意識」にあると言っていい。

 鹿島にはファミリーを大事にするという“ジーコ・イズム”が浸透している。鹿島の強化責任者を務める鈴木満常務がこう語ってくれたことがある。「ファミリーのパワーというのは、ジーコがいつも言っていたこと。これが結束力、一体感につながっていく。帰属意識を持たせるためには、やっぱりクラブが個々の選手を大切にしていかなければならない」

 厚すぎず、薄すぎずの戦力で全員にチャンスを与える環境をつくり、チームに参加する意識を持たせてきた。構想外となった選手に対しても次の移籍先をクラブが探すなど、放っておくことはまずしない。選手のほうも「大切に扱われている」感覚があるために帰属意識が高まっていくのである。サッカーのスタイルや基本的な布陣を変えないのも、復帰する選手からすればプレーをイメージしやすい。

 鹿島は帰りたくなる場所。海外に送り出すだけでなく、呼び戻す道をつくっていくのもJクラブには求められている。(スポーツライター)

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