【二宮寿朗の週刊文蹴】ニッポンの技術力 グランパスからの挑戦状

スポーツ報知

 名古屋グランパスが“フルモデルチェンジ”でJ1に戻ってくる。昨季J2で断トツの85得点を挙げた怒とうの攻撃サッカー。風間八宏監督いわく「自分たちが主体となり、見ている人が面白いと思う」スタイルが名古屋の新しいカラーである。

 川崎フロンターレを強豪に仕立てた風間監督は16年シーズン限りで退団。「自分もトライしなきゃいけない」と新天地に選んだのがJ2に降格した名古屋であった。昨年の就任会見では冒頭、このように述べていた。「このクラブには地域を含め、いろんなものがまだ隠れていると思います。全員で掘り起こして前へと進みたい」

 その一つとしてファン、サポーターをさらに掘り起こそうとした。魅力的なサッカーを展開すれば、人も集まってくるはず。昨年1試合平均の観客動員数はJ1時代の一昨年より下回ったとはいえ、今はまだ変革の最中。だが、昇格プレーオフ決勝では豊田スタジアムを満員に埋めている。

 掘り起こした先に、何があるのか。指揮官がどことなくシンクロさせているのは筆頭株主、トヨタ自動車の歩みではないだろうか。織機製作の技術を車の開発に生かして、彼らは「世界のトヨタ」になった。その土壌を持つ名古屋の地で技術を高め、世界に打ち勝つクラブをイメージしているように思えてくる。

 風間監督から聞いたことがある。79年、日本開催の世界ユース選手権であのディエゴ・マラドーナと出会い、衝撃を受けたことを。独特のサッカー観はここが原点だ。「マラドーナに勝つには、ボールを取られないための技術を身につけるしかないと思った。パワーで負けても技術と駆け引きなら対抗できる、と」

 昨季ブラジル全国選手権で得点王&MVPのジョーを獲得するなどクラブも本気を示す。ニッポンの技術力。名古屋からの挑戦状である。(スポーツライター)

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