【岩政大樹 オン・ザ・ピッチ】全員にメンバー入り危機感

スポーツ報知

 Jリーグの開幕が徐々に近づいてきましたが、秋春制で行われている欧州などでは日本代表選手のアピール合戦が繰り広げられています。

 昨年11月の欧州遠征で落選した香川選手や本田選手は着実にゴールを積み上げ、岡崎選手も好調で効果的なプレーを続けています。さらに、当落線上と見られている武藤選手は存在を示すようにゴールを重ね続け、森岡選手は名門クラブ(ベベレン→アンデルレヒト)へのステップアップを果たしました。一方で、W杯予選で主力を担っていた原口選手(ヘルタ→デュッセルドルフ)や長友選手(インテル→ガラタサライ)は出場機会を求めて移籍に踏み切りました。

 当然、選手はそれぞれのクラブへの貢献を考えてプレーしていますが、頭のどこかに「ワールドカップのため」があるのは明白です。どの選手にもフラットな対応をして、競争をあおる。ここまでのハリルホジッチ監督のチームづくりを見ていると、こうして直前まで全員にメンバー入りの危機感を持ってプレーさせることこそが一番の狙いで、チームづくりの根幹だったと思われます。

 信頼関係のバランスはチームを作る上での一番の肝です。監督という立場からすれば、主力選手の何人かに信頼を示し、選手たちとの間に温かい空気を作り出した方がチームは作りやすいと思います。しかしその場合、バランスの取り方を間違えると少しずつチームは生ぬるい空気にもなりがちで、そのときに「どの選手にもフラット」とは言えない状況を招くことにもなります。数か月に1回しか集まれず、W杯まで長い時間をかけてチームを作る代表チームでは、クラブともそのバランスは違うのでしょう。監督の本領はここからです。

 ハリルホジッチ監督の招聘(しょうへい)は「W杯で結果を出している監督」という条件が一つの要因だったはずです。その結果を、代表チームにおける信頼関係のバランスという観点から注目してみようと思っています。(東京ユナイテッド、元日本代表DF)

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