【二宮寿朗の週刊文蹴】時代が求めるVAR導入
VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)は、時代からの要請である。
試合の“高速化”が進み、審判団が広大なピッチにおいて対応が難しくなってきている時代。他のスポーツと同様にテクノロジーとの共存は、もはや避けられそうにない。
審判補助システムの一つであるVARは、ビデオ審判がモニターの映像で判定をチェックする機能。ゴール、PK判定、一発退場、選手誤認という4つの事象にのみ主審、副審に助言できる。主審はモニターで確認したうえで、最終的な判断を下す。欧州でも試験導入のドイツ、イタリアに続き、来季からスペイン、フランスでも採用する。
Jリーグでも2020年の導入を想定し、準備が始まっているそうだ。
あらためてVARの必要性を痛感したのが3月31日の川崎―広島戦。終了間際、川崎の車屋紳太郎が左サイドの深い位置からクロスを送り、こぼれ球を押し込んだ長谷川竜也のゴールがオフサイドと判定された。
クロスに対して相手DFが触ったボールをGKがはじき、再びDFに当たって長谷川の前に転がった。オフサイドは成立しないが、そもそも車屋のクロスを防ごうとした別のDFが深い位置に残ったままで、この時点でオフサイドではなかった(と筆者は解釈する)。
これ、リプレーを見ればよく分かる。まさにVAR対象のシーンであり、導入していればゴールは認められたはずだ。
確かにVARには試合を止めてしまうデメリットがあり、欧州ではサッカーの魅力を損なうという根強い反対意見もある。
極論を言わせてもらえば、誤審を「人間がやるものだから仕方ない」と受け入れるか、それとも正確性を求めてテクノロジーを活用していくか、そのどちらを選ぶか。「仕方ない」と受け入れる風潮が日本にあるとは思えない。VAR導入の動きは正しい方向性だといえる。(スポーツライター)