【横浜M】意地とプライドの“ダービー”立場変わった斎藤学へのそれぞれの思い

スポーツ報知
試合後、川崎・斎藤(37)は横浜M・中沢ら古巣のチームメートと握手を交わした

◆明治安田生命J1リーグ第6節 横浜M1―1川崎(8日・日産スタジアム)

 横浜Mは、ホームで川崎に1―1で引き分けた。試合前の対戦戦績は12勝4分け12敗。神奈川の盟主を争う“ダービー”はがっぷり四つ、両者一歩も譲らない展開となった。0―0で前半を折り返すと、後半13分に川崎が先制。3分後にはDF中沢佑二が今季初得点を奪取。一進一退のまま、終盤に突入。同32分に、FW斎藤学がピッチに入ると、スタジアムはさらにヒートアップ。横浜Mの応援席は、昨季まで背番号10を付けたドリブラーに容赦ない大ブーイングを浴びせ、川崎側は対抗するように応援歌を奏でた。

 ちょうど1年前の17年4月8日、横浜M―磐田。トリコロールの主将で10番を担っていた斎藤は、2年前までチームを率いたMF中村俊輔率いる磐田相手に2アシストの活躍をみせ、2―1の勝利に導いた。「(中村俊は)ずっと背中を見て育ってきた選手。でも試合になったら関係ない」と鋭いドリブルで相手DFを翻弄する姿は、サポーターの誇りであり、希望だった。

 あれから1年。横浜Mは、“敵”として斎藤と対峙(たいじ)することになった。斎藤にとっては、右膝前十字じん帯を損傷した昨年9月23日の甲府戦以来の公式戦。思わず笑みを浮かべてピッチに入る背番号37に対し、「にやけすぎじゃない」とささやいたのはDF松原健。試合終盤ということもあり、松原は「疲れて足にきていた」が、「絶対に負けられない。気を引き締め直した」とマッチアップした元同僚に食らいついた。後半ロスタイムに懸命のジャンプで斎藤のシュートを止めたGK飯倉大樹は「ラスト15分で相手の決定機が多かったのは、彼のおかげ」と話し、DF中沢も「左サイドであれだけタメを作られるとね。改めて良い選手だと思った」とかつてのチームメートの実力を認めつつ、意地とプライドでゴールを死守した。

 昨オフ。横浜Mは16年の中村俊に続き、2年連続で背番号10の主将が流出した。しかも斎藤は同県内のライバルクラブへの移籍とあって、物議を醸した。今もなお、それぞれの立場で見方は分かれる。ピッチ脇に斎藤が登場した瞬間、ブーイングがスタジアムを包んだが、手をたたき、笑顔で復帰を祝す横浜Mサポーターの姿も少なくなかった。試合後、斎藤は言った。「ここに(復帰を)合わせたわけではないが、マリノス戦というのは感じる思いがあった。好きなクラブなので、あいさつしたかった」とハーフウェーラインをまたぎ、横浜Mの応援席に向かって、小さく頭を下げた。

 両チームを中心に、様々な思いが交錯するのは当然だろう。それでもスタジアム全体に感情が入り乱れた一戦は“ダービー”にふさわしく、語り継がれるであろう好ゲームだった。(田中 雄己)

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