【二宮寿朗の週刊文蹴】戦うエネルギーを高める映像の力

スポーツ報知
浦和のオズワルド・オリヴェイラ新監督(左)と中村修三GM

 浦和レッズを率いるオズワルド・オリヴェイラ新監督は、選手のモチベーションを引き上げる名人である。

 鹿島アントラーズ時代、2連覇を達成する2008年の終盤戦のこと。優勝への重圧がのしかかってくるタイミングで、彼は選手に内緒で家族からのメッセージビデオを用意した。その効果はてきめんで、家族の言葉に発奮したチームは3連勝して優勝をつかんだのだった。

 戦うエネルギーを高める映像。これまでも劇的なドラマの裏で選手たちの背中を押してきた。

 1次リーグを突破した10年の南アフリカW杯では、選手たちがボールに食らいつく場面を集めた映像を見せている。一方、なでしこジャパンが優勝した11年の女子W杯では準々決勝のドイツ戦を前に、東日本大震災の被災地映像を全員で見た。誰もが涙を流し「被災地のためにも」と奮い立った話は有名だ。

 ラグビーでも「戦うエネルギーを高める映像」が注目を集めることになったのが、15年のイングランドW杯。優勝候補の南アフリカを破る歴史的な勝利をアシストしている。トップリーグの選手やOB、ラグビー関係者700人ほどの応援メッセージが、南アフリカ戦の前に披露された。そのアイデアを出したのが陰でチームを支えたベテラン、広瀬俊朗さん(現東芝コーチ)である。

 彼がこう語ってくれたことがある。「映像をつくってくれたのは代表前キャプテンの菊谷(崇)さんでした。自分たちの後ろにはこんなにも大勢の人がいて、喜んでもらうには明日の試合に勝つしかない。じゃあ自分たちは何ができるんだと考えたら、思い切ってタックルに行こうってなる。初めてビデオを見せてもらったとき、『これはいけるな』と思いました」

 気持ちを一つに束ね、背中を押すための映像の力。ロシアW杯で勝つために、用意してみてはいかがだろうか。(スポーツライター)

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