【岩政大樹 オン・ザ・ピッチ】勝負を分けるゴール前の緻密な判断

スポーツ報知

 今年のJリーグでオウンゴールが頻発しています。スタートダッシュに失敗した鹿島に至っては、ここまでオウンゴールで3失点しています。

 オウンゴールは「不運」という言葉とともに受け止められることが多いですが、実はそうではありません。確かに難しいプレーではありますが、オウンゴールも守備者のミスと言えます。私もキャリアの中で2つのオウンゴールを経験しました。たくさんのいいシュートブロック(クロスブロック)もしてきましたが、それでも防げなかった失点の記憶が薄れることはありません。

 良いシュートブロック(クロスブロック)とオウンゴールは紙一重です。ゴール前の紙一重を制するためには、集中力を最大限に高め、かつ体の力を抜いてその場面を迎えなくてはなりません。ボールの軌道に合わせ、数センチ単位でボールへの当て具合を調整しなくてはならないからです。

 それに加え「あえてさわらない」という選択肢も残されています。シュートブロックでさえ、さわれるなら絶対にさわればいいわけではなく、ボールに触れてコースが変わり失点の確率を上げてしまうなら「さわらない」という選択をしなくてはなりません。

 つまり、ボールに触れるか触れないかの判断を最後の一瞬までせず、そのどちらも選択できる状態にしておき、そして最後の一瞬で、どのプレーが最も失点の確率を減らせるかを判断し実行する。守備者は、ゴール前の一瞬の精度と常に向き合い続けるしかありません。

 長い距離を走ってカバーリングするとか、高い打点でヘディングするとか、そんな派手さはゴール前の緻密な判断にはありません。しかし、サッカーにおいて本当の勝負を分けるのはゴール前の一瞬、数センチです。逆に言えば、ゴール前で何げなくクリアしてみせるプレーにもファインプレーが隠れているのです。(東京ユナイテッド、元日本代表DF)

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