天才中学生、藤井聡太四段と張本智和が対談! 「五輪で金メダル」「将棋界のトップに」

スポーツ報知
対談し互いに刺激しあった藤井聡太四段(右)と張本智和

 2017年の列島を沸かせた天才中学生2人による夢の対談が実現した。将棋史上最多の29連勝を記録した史上最年少棋士・藤井聡太四段(15)と世界卓球で史上最年少でベスト8入りを果たした張本智和(14)=エリートアカデミー=がドキドキの初対面。「夢は名人」「夢は五輪金メダル」。初々しい緊張感に包まれながら、お互いの競技について、未来について語り合った。(司会・北野 新太、林 直史)

 藤井(以下藤)「(ものすごくテレつつ)あ…こんにちは。初めまして。藤井と申します」

 張本(以下張)「(少しテレつつ)こんにちは。初めまして。張本です。お会いできてうれしいです。よろしくお願いします」

 藤「よろしくお願いします。僕は…あまり卓球に詳しくないのですが、兄が中学の時に卓球部にいたこともあって、テレビで卓球の試合を見るのも、漫画の『ピンポン』(著・松本大洋氏)も好きなんです」

 張「そうだったんですか! ありがとうございます!」

 藤「なので今年、張本さんが水谷(隼)選手(リオ五輪男子シングルス度メダリスト)を破った時は本当に驚きました。世界トップレベルの水谷選手に13歳で勝つなんて…と。相手に向かっていく気持ちの大切さを感じました」

 張「ありがとうございます。でも、僕の方が驚きました。将棋と言えば羽生善治さん(竜王)ですよね。あの羽生さんに藤井さんが勝たれて本当に驚きましたし、その後、29連勝もされて…。卓球の世界では29連勝なんてありえなくて、自分なんて10連勝も経験ないくらいですから。自分は勝ち続ける強さを身に付けたいんです。だから本当に雲の上の存在だな、と」

 藤「(テレつつ)いやいやいや…とんでもありません。あの水谷選手との試合はどのような気持ちで臨まれたのですか?」

 張「失うものなど何もないという気持ちで最初から戦いました。勝ってから2か月くらいは信じられなくて…えーと…あれ? まだ今も信じられてないかもしれません(笑)。そのくらい大きな1勝でした。やはり格上の相手に勝てた時の数秒間の爽快感は特別なものがあります。藤井さんが羽生さんに勝った時はどんなお気持ちでしたか?」

 藤「羽生先生は仰ぎ見る存在ですので、信じられないという喜びがありました。でも、1度だけではなくて、たくさん対戦を重ねた上で勝つということが本当の勝利だと思いますので、その舞台(タイトル戦)に立てるようにしないといけないなと思います」

 張「卓球と将棋には共通点もあると思うんですが、相手が想定外の手を指してきた時の考え方には、どのくらいのパターンのようなものがあるんですか?」

 藤「将棋は一手一手の選択肢や展開が無限にあるゲームですので、いくつか分かれている戦い方に絞り込んで考えていきます。卓球も、例えばサーブの時に回転などを打ち分けたりする駆け引きのゲームだと思いますが、相手が打ってきたボールに対して瞬時に判断するものなんですか? それとも、最初から想定して対応されるのか…」

 張「だいたいは相手がどこにどんなボールを打ってくるかを予測します。ただ、もちろん予測が全て当たるわけではないので、逆を突かれた時のための練習をたくさんします。藤井さんは対局中に何手先まで読んでいるんですか?」

 藤「分岐がたくさんありすぎて全て読むことは不可能ですけど、20手、時には30手先くらいを読んでいる時もあります」

 張「30手! すごい…。卓球はラリーが30球続くということはまずないので、考えて2球先くらいでしょうか。あとは目の前の球をひたすら打つ感じです。将棋の方が絶対に頭を使ってますよね」

 藤「いやいやいや…。頭を使うと言えば…中学校での好きな科目は何ですか?」

 張「体育と給食がやっぱり楽しみです。体育の授業で走ったりするのは好きです」

 ―「走る、と言えば藤井さんは50メートル走6秒8の俊足ですよね」

 張「え! すごい! 自分は7秒5とかです!」

 藤「(テレて)いやいやいや…。運動で張本選手に勝る部分がひとつでもあるなんて光栄です…。僕は数学や地理が好きで、美術や音楽は全然ダメなんです」

 張「あ、僕も美術や音楽は全然出来ないです。数学で計算するのはけっこう好きで問題を解くと爽快感を感じます。地理や歴史もけっこう好きです」

 藤「数学は必ずある解答を目指していけるのが面白いです。将棋も突き詰めていくと必ず答えがあるものですし」

 ―「共通点も多そうなお二人ですけど、将棋と卓球では感情表現が全く違いますよね。張本さんの『チョレイ!』を藤井さんが対局室でやったら…」

 藤「大変ですね(笑)。でも、僕は対局中に表情が出てしまうタイプなんです。卓球でも、やはり試合中はポーカーフェイスを貫くことが大切なんですか?」

 張「大事なのかもしれませんけど、自分も負けている時とかは表情に出てしまいます。でも、自分は感情を剥き出しにして戦う方が向いている気がします」

 藤「張本さんは普段、ご自宅に居る時も卓球のことを考えますか? 僕は日常生活でも完全に将棋と切り離される時はありません。将棋は盤駒さえあれば…というか盤駒がなくても頭の中で出来てしまうので」

 張「逆に卓球は家では出来ないので普段は考えないようにしています。むしろ野球のことを考えているかもしれません」

 藤「…。野球ですか?」

 張「本当に野球が好きすぎるので。楽天ファンなんです…」

 藤「仙台のご出身ですもんね。自分は特に(愛知県在住ながら)中日ファンではなくて…」

 張「清宮(幸太郎)さんにはぜひ入ってほしかったです…。高校通算111本塁打とか本当にすごすぎるので」

 藤「そうですよね…。張本さんはどのような目標をお持ちなんですか?」

 張「もちろん五輪で金メダルを獲ることです。東京で獲ることにいちばん価値があると思いますけど、まだ今は目の前の大会に勝っていくことしかないです。あとは大舞台で中国選手に勝った日本人選手はなかなかいないので、中国選手に勝って金メダルを獲りたいです。今は年少記録のことをよく言っていただきますけど、5年後に今と同じでは何も言われなくなっているとも思いますので。藤井さんの目標は何ですか?」

 藤「私も最年少ということで大きく採り上げていただきましたけど、大事なのは最終的にどれだけ強くなれるかですので、ブレずにいたいです。あとはやはり名人というものは将棋界で特別なものなので目指していきたいと思います」

 ―「10年後の自分というイメージはありますか?」

 張「五輪を2度迎えているので、少なくとも1度は優勝して24歳からの10年間は自分の時代にしたいです」

 藤「ピークに達していないといけない年齢なので、どれだけ強くなれるかだと思います。名人位も含めて将棋界のトップにいたいとは思います。張本さんは2018年をどのような1年にされたいですか?」

 張「まず1月に全日本選手権があるので、シングルス(一般)を獲りたいと思います。藤井さんは?」

 藤「とにかく今が成長出来る時期なので一日一日を無駄にせず、強くなりたいと思っています」

 ―「最後に、お互いに聞いておきたいことなどがあれば…」

 藤「遠征などで移動時間も長いと思いますが、どのように過ごされてますか?」

 張「現地に着けば勝負が始まるので、最後の休みだと思ってリラックスしています。野球ゲームをしたり…音楽を聴いたりします。好きな音楽は、最近知った秦基博さんの『鱗』など…。ご存じですか?」

 藤「存在を聞いたことくらいは…。私も音楽はスピッツなどを聴きます」

 張「あの『チェリー』の…」

 藤「やはり『チェリー』になりますか…。『ロビンソン』も有名なんですけど、個人的にはセカンドアルバム『名前をつけてやる』の『魔女旅に出る』はスピッツ屈指の名曲だと思っています」

 張「へー…。あ、そうだ!自分も聞きたかったことがあります。本当に好きな勝負めしって何ですか? 出前を運ぶ人がテレビカメラに追跡されていたのはビックリしましたけど…」

 藤「私も後で知って驚きました…。手早く食べられておいしいものがいいので、やはり麺類です。張本さんは…」

 張「自分もパスタとかが好きです。あとはメロンが大好きです」

 藤「やはり消化にいいものですよね…。今日は貴重なお話をありがとうございました」

 張「こちらこそ、ありがとうございました。またお会いさせていただけたらと思います」

 

 ◆張本 智和(はりもと・ともかず)2003年6月27日、仙台市生まれ。14歳。元選手でコーチの父・宇さん、1995年世界選手権の中国代表の母・凌さんの影響で2歳から卓球を始める。小学1年から全日本を世代別7連覇。昨年、世界ジュニア選手権シングルス、団体優勝。今年の世界選手権は史上最年少で8強入り。10月のチェコOPでワールドツアー史上最年少優勝。172センチ、61キロ。家族は両親、卓球選手の妹・美和(9)。

 ◆藤井 聡太(ふじい・そうた)2002年7月19日、愛知・瀬戸市生まれ。15歳。杉本昌隆七段門下。5歳で将棋を始める。16年、棋士養成機関「奨励会」を突破し、史上最年少の14歳2か月で四段(棋士)昇段。17年2月、非公式戦で羽生善治3冠(当時)を破る。同6月、史上最多となる公式戦29連勝を記録。名大教育学部付属中3年に在学中で来年4月から同付属高に進学。趣味は詰将棋。身長169センチ。家族は両親と4学年上の兄。

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