日大・内田前監督、宮川選手の会見を全否定…“想定外”を強調

スポーツ報知
日大アメフト部の反則問題を巡り、記者会見で質問に答える内田前監督(右)(左は井上コーチ=カメラ・川口 浩)

 日大アメリカンフットボール部の悪質タックル問題で、内田正人前監督(62)と井上奨(つとむ)コーチが23日、都内で約2時間の緊急会見を開いた。2人は6日に行われた関学大との定期戦で相手QB(クオーターバック)を負傷させた宮川泰介選手(20)への反則指示を改めて否定。22日に会見した宮川選手の発言と真っ向から対立した。内田前監督は日大の常務理事の職務を一時停止して謹慎、井上コーチは辞任を表明したが、会見内容には非難の声が飛んだ。

 黒のスーツに身を包んだ内田前監督と井上コーチは、神妙な表情で頭を下げた。300人を超える報道陣の前で、冒頭に口を開いたのは内田前監督だった。「一連の問題で関西学院大のけがをされた選手、お父さん、お母さん、ご家族にはまことに申し訳ありませんでした」と、井上コーチとともに約8秒間頭を下げた。19日に報道陣に対応した際には「かんさい」と言い間違え続けたが、この日は「かんせい」と修正。が、その後は苦しい弁明が相次いだ。

 宮川選手は22日に開いた会見で「相手のQBを1プレー目で潰せば(試合に)出してやる」と井上コーチを通じ、監督の指示を伝えられたと明かしていた。だが、内田前監督は真っ向から否定。「信じていただけないかと思いますが、私の指示ではございません。ルールを守るという原則で我々はやっている」と主張した。井上コーチは「けがをさせることを目的としては言っていないが、宮川選手に対して『潰してこい』と言ったのは真実」としつつも、監督指示については「ありません」と重ねた。

 反則プレーに関しては、内田前監督がインターネットの動画で確認したのは試合から3日後の9日頃と主張し「正直、予想できなかった」と“想定外”を強調。宮川選手が「潰しにいくので使ってください」と試合当日に直訴し、前監督は「やらないと意味ないよ」と応じたとされるが「確かに(宮川は)来たが、正直何を言ったか分からない」と、そもそも会話が成立していないとの見方を示した。

 特に「潰す」という言葉を巡り、選手側と指導者側の主張は平行線をたどった。宮川選手は、井上コーチが指示の中で相手を負傷させる「けが」という言葉を直接的に使ったとしている。同コーチは繰り返し突っ込まれる中で「けがという言葉を使ったかは覚えていない」とトーンダウンし「宮川選手がうそをついているのか」と聞かれると「発表したこと、彼が思っていることは合っていると思う」と矛盾をさらけ出した。

 会見をインターネットで見ていたある大学アメフト関係者は「何を説明する会見なのか理解できなかった」と絶句。「日大指導者は宮川選手との関係性がおかしいことに気づいていないようだ。あの説明で世間が納得するとは思えない」と話した。また、別の関係者も「内容はこれまでの主張の繰り返し。ひどすぎますね」とあぜんとした。この日、練習グラウンドに姿を見せた日大アメフト部のある現役部員は「あれは反則を指示している。(前監督や大学側は)逃げている」と不信感を隠さなかった。

 会見は午後7時に発表され、同8時時開始という慌ただしさ。内田前監督は大学の常務理事としては謹慎して第三者委員会の裁定を待ち、井上コーチは辞任を表明。内田前監督はアメフトを辞めるという宮川選手に謝罪し「戻ってきてもらいたいのが率直な考え」と呼びかけたが、その言葉は空虚に響いた。24日がメドの関学大への再回答に盛り込まれる説明は、この日の前監督らの主張に沿ったものになるとみられ、関学大側が再び反発する事態は避けられない。

スポーツ

×