比嘉大吾のV2戦へ具志堅会長、ルーチン回復メニューで敵討ち託した

◆プロボクシング 世界戦 ▽WBC世界フライ級(50・8キロ以下)タイトルマッチ 王者・比嘉大吾―同級9位モイセス・フエンテス(4日、沖縄・沖縄県立武道館)
WBC世界フライ級王者・比嘉大吾が、沖縄ボクシング界のジンクスを打ち破る。2度目の防衛戦に向けて3日は那覇市内で計量が行われ、リミットの50・8キロ、相手の同級9位モイセス・フエンテスは50・6キロでともに一発クリア。陣営の具志堅用高会長(62)は、自身が14度目の防衛戦で敗れた際、計量後のルーチンとして食べられなかったアイスクリームを用意。日本勢過去3戦全敗の沖縄での世界戦へ“具志堅劇場”の開幕で準備を整えた。
時空を超えてルーチンを完成させた。具志堅会長は比嘉の計量を横から食い入るように見つめ、リミットの50・8キロだったことを確認。「おー! ピッタリ!」と両拳を突き上げると、そそくさと沖縄のアイスクリーム「ブルーシール」を取り出した。「悔しい思いを繰り返さないようにね」。報道陣から笑い声が漏れたが、アイスへの思いには理由があった。
現役時代の具志堅会長は、アイスを食べるのが計量後のルーチンだった。しかし、地元・沖縄で開催された1981年のV14戦では「日曜日で近くのお店が閉まっていた。コンビニもなかったし」と食べられず。連続防衛記録が止まり「アイスがあれば20回は防衛していた。あれで(ボクサー人生が)終わったんだから。涙が出てくるよ」と真剣なまなざしで感慨にふけった。
それ以来となる故郷での世界戦に挑むまな弟子は、思いを真摯(しんし)に受け止めた。約10キロの減量を乗り越えて頬張るアイスに「幸せな気持ち。37年分の思いが入ってくる。しっかり背負って戦います」。甘酒、スッポン料理、ステーキという計量後の回復メニューも、地元での試合はアマ時代に1度だけで「計量後の食事もどこですればいいのか」と不安を抱えていたが、会長が人脈を生かして全てを用意した。
KO勝ちなら、沖縄出身の元WBC世界スーパーライト級王者・浜田剛史らの15連続KOの日本記録に並ぶ。沖縄での世界戦は日本勢の3戦全敗だが、比嘉は「会長の敵討ち。100%の状態でKOする」とジンクス打破に気合。チケット3000枚は発売日に完売しており、具志堅会長は「居酒屋に飲みに出ないで、どうしても家で見てほしい。視聴率50%以上の数字を!」と訴えた。師匠から弟子へ、「沖縄の英雄」のバトンをつなぐ。(浜田 洋平)
◆V2戦で比嘉の食べた回復メニュー
▼アイスクリーム 沖縄を中心に展開する「ブルーシール」の紅イモ味。
▼スッポン料理 試合前夜の恒例。今回は、具志堅会長が37年前と同じ職人に作らせた。
▼ステーキ 会長は「(元5階級制覇王者の)メイウェザーが食べる肉」。
▼甘酒 過去2度の世界戦と同じ黒麹(こうじ)を使った地元・沖縄の「黒あまざけ」を用意。